第229話 夏休みの名物?です

 夕方。

 スーパーに寄って食材を少し買ってマンションに帰ってきた。

 ちなみに亜里砂さんは食材の他に手提げ紙袋を2つ。

 彩香さんも紙袋を1つ下げている。

 つまり誘惑に負けて散財してしまった訳だ。


「だって頭子や葉耶麻で買うのより安くてこんなに可愛いんだよ」

 と彩香さんは力説していたが、食費等は大丈夫だろうか。

 魚はまだあるけれど、野菜が厳しい。

 夏になると野草も筋張ってきていまいちになるし。


 ささやかな夕食が終わるとファッションショーが始まる。

 いや、僕に披露しなくても。

 そもそも買う時に僕も選ばされたんだし充分見ているよと思うのだけれど。


「どうですか。こういう感じは今まで持っていなかったのですけれど」

 確かに可愛い。

 青系統のシンプルなワンピースだけれど、上品でお嬢様っぽく見える。


 ちなみに似たデザインを横で亜里砂さんが着ている。

 こっちは紺色で、色白な亜里砂さんに似合っている。

 うん、確かにこれも可愛いな。

 同じ学年だけれど、彩香さんより少しお姉さんに見える。

 体型や身長の差だろうか。


「どっちもよく似合っているよ」

 と取り敢えず無難に答えておく。

 まあ亜里砂さんは表層思考が丸見え。

 僕が考えている事は全部わかってしまっているのだろうけれど。


「という訳で、この服は大事にしまっておくのだ。持ち帰る時までにシミでもついたら悲しいのだ」

 という訳で、取り敢えず彩香さんの洋服ダンスに入れておく。


 そしてその後。

「ついでだから夏休みの宿題も今のうちやっておくのだ」

 という話も出て。

 一緒に取りかかろうとして始めて気づく。


「何でA組の宿題はこんなに少ないのだ」

 同じ学校で1学年2クラスしか無いのに、宿題の量が違った。

 A組は各教科総花的に網羅したプリント10枚のみ。

 B組はそれに問題集が3冊余分についてくる。

 薄手の問題集だがプリント10枚に比べるとかなり量が多い。


「不当差別なのだヘイトスピーチなのだ」

 いやヘイトスピーチは関係ないでしょう。


「でもわからないところがあれば悠君が教えてくれるし、頑張りましょう」


「何で彩香では無く悠が教えるのだ」


「前に私の教え方はわからないと言われたからです。わかっている事が前提になっているって」


「なるほど。では宜しくなのだ」

 そんな訳で宿題作業も始まる。

 何か夏休みだなあ。

 そんな事を感じる夜だ。

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