第209話 生ハムの種類と等級です

 そんなこんなやっているうちに。

 笛の音が鳴る。


「はい休憩。皆上がって」

 という訳で皆上がって休憩。


 上がって思わずちょっとドキリとする。

 合宿で彩香さんの水着姿は散々見た筈なのに。

 水泳帽に学校水着でもやっぱり彩香さんは可愛いな。

 その事に改めて気づいたりもして。

 

 プールの向こう側にいた女の子がとことここっちにやってくる。

 髪の色が茶色で天然パーマかかっていて、肌も明らかに白い。

 多分留学生か彩香さんと同じ感じで外国から来たのだろう。

 同じ1年のB組の子だ。

 名前はちょっと覚えていない。


「彩香、どう、泳げそう?」


「このままなら何とか。亜里砂は」


「私は涼みに来ているだけなのだ。後はダイエットになってくれれば嬉しいのだ」


 ダイエットが必要な程太くはないと思うけれどなあ。

 そう思って思わず赤面しそうになる。

 まずいまずい。


「それで隣は彼氏」

 どきっとする。


「うーん、正確には私の世話係かな。席が前後だし、この学校の主流派じゃないし」

 ちょっとほっとしつつ、若干残念だったりして。


「なるほど。それではご挨拶をば。私は羽紋はもん・セラーノ・亜里砂ありさ。通称イベリ子なのだ。帰る宛てがないのでここの学校に居着いているのだ」

 通称イベリ子で思わず笑ってしまう。


「なお私のフルネームと通称で笑う奴はスペイン出身か喰意地の張った奴なのだ」


 わかって言っているな、彼女。


羽紋はもん・セラーノの時点で冗談だろって言われないですか」


「残念ながら本名なのだ。母親が日本人と再婚したらこんな名前になってしまったのだ。やけになってイベリ子とかベジョータとか自称しているのだ。こっちの方が上質なのだ」

 駄目だこれ。

 本来なら女の子にこともあろうに、と思うところだ。

 でも本人がネタにしているからどうしようもない。

 ちなみに彩香さんはわかっていない模様だ。


「生ハムじゃないんですから」

 一応そう言ってわかっているよと主張しつつつっこんえおく。


「日本人でこのネタわかる人は珍しいのだ。金持ちか喰意地系かどっちなのだ」


「実家の近くに生ハム専門店がありました」


「なら取り敢えず許可なのだ」


「あと太っていなくてもダイエットする理由が理解出来ました」


「ちょっとでも太ると洒落にならなくなるのだ」


「何で」

 彩香さん、やっぱりわかっていない。

 でも説明していい物なのだろうか。

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