第178話 事故発生、でも……

 獲物は着実に増えてきている。


 岩場の上に未亜さんとか彩香さんが待機している。

 こっちが手をあげるとたも網を伸ばしてこっちに差し出す。

 捕った獲物を入れると網をたぐって、獲物を海水入りバケツに入れるという感じ。

 網の長さは最大5メートルあるそうで、結構届く。

 そして獲物も牡蠣以外に。

 アワビっぽいのとかサザエっぽいのとか、ウニまで捕っている。


「完全に漁業権侵害なのですよ」


「無人島以外では許されない漁獲ね」


「無人島でも違反なのです」

 なんて岩場から声が聞こえるが、まあ無視。


 そんな感じで順調に捕っていて。

 最初の岩場を1周した辺りでだ。


「取り敢えず休憩。全員一度戻ろう」

 という朗人先輩の指示で浜へ戻る。


 戻ってみると文明先輩の様子がおかしい。

 浜に戻ったところでそのまま倒れている。


「大丈夫ですか」

「大丈夫。取り敢えず今は」

 うん、大丈夫ではなかったっぽい。


 一方、朗人先輩は透里先輩や朋美先輩と話している。


「助かった。ありがとう、透里さん、朋美さん」

「朗人先輩は予想していたんですか」

「いいや、危険のひとつとして認知はしていた程度だな。正確には僕じゃ無くて佳奈美が、だけれど」


 やっぱり文明先輩が事故になりかけたらしい。

 それを透里先輩が魔法で発見。

 朋美先輩が超能力で引っ張って浜に上げたというわけだ。


「今回は不注意でなくて運が悪い方だな。

 説明は僕より佳奈美が上手いだろ、任せる」


「了解なのですよ」

 佳奈美先輩がそう言って話し始める。


「文明に起こったのはめまいみたいな物なのです。

 波のあるところで泳ぐ等していると。まれにですが三半規管に異常が起きて、上下がわからないめまい状態が起こったりするのです。

 それで文明が泳げなくなったのを透里が察知。朋美が能力で浜に上げたのです。


 なお岩場で潜っていると他にも危険は色々あるのです。波で岩に当たって怪我をしたり、潜ったその先の上に岩があって上に上がれなかったり。水流の影響で運悪く岩にはまった、なんて冗談みたいな事故もあるのです。


 だから念の為、監視体制と救助態勢を整えて、全員で採取を開始した訳なのです」


 なるほど、色々考えた上での事だった訳か。

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