第137話 予定外に楽しみすぎて

 楽しさが一段とアップした。

 砂底にいるキスとかメゴチ。

 たまに潜っているフグ類とかも追いかけられる。


 勿論そんなに息が続く訳では無い。

 すぐ水面戻って呼吸しなおし。

 まだシュノーケルのみで呼吸なんて技は出来ない。

 それでも面白いのは間違いない。


 一方、彩香さんは彩香さんなりに楽しんでいるようだ。

 ライフジャケット着用なので潜れない。

 でもその分楽だし推進力もあるようだ。

 水面上だと下手したら僕より速い。


 なお美洋さん達の方からは、時々未亜さんの邪念が聞こえる。

「ああ禁止で無くてマイナスドライバー1本でもあれば、サザエとか牡蠣とか取り放題なのに」

 とかそんな台詞で。

 何か密漁漁師の怨念にでも取り憑かれているのだろうか。


 先輩は基本的にはあまり泳がない。

 海の上でも寝ているかのように省力化している。

 ただ動きがすごく綺麗で無駄が無い。

 それこそすーっと水中へ動いて潜水し、そして水上でふらふらする感じだ。


 何種類の魚を見ただろう。

 ちっこくて派手な色のウミウシとかもいたし。

 未亜さんが最後まで邪念を向けていたウニもいたし。

 そんな感じで楽しんでいるところで。


「まずい、そろそろ終わり!」

 先輩がそう宣言した。

 何だろうと思いつつ全員が上がる。


「何ですか」

「いや、そろそろ体力的にやばい筈だ。体温も奪われているしな」

 そんな感じはしないのだが。


「どうせ夏休みは何度でもここには来られる。だから撤収!」

 という事で名残惜しいけれど今の場所を後にする。


 そして気づいた。


「何か異様に身体が重いのですよ」

 未亜さんの意見に1年全員が頷く。


「そういう訳だ。本当はもう少し早く上がる予定だったけれどな。

 そんな訳で次は夏休みに練習だ。彩香もライフジャケット無しで出来るようにしないとな」


「ジャケットありでも楽しいです。色々見えるし楽だし」


「でも潜れるともっと色々見えますよ。ちっこくて綺麗な生き物もいますし、貝や魚も……あああのウニが惜しいのです」


 ずるずると歩きながらそんな事を話して。

 それにしても砂浜を歩くのは体力を消耗する。

 テントに戻ったところで取り敢えず全員休憩。

 ばたっと倒れて。


 僕もそのまま倒れた。

 テントの温かさが今は心地いい。

 そうやってテント内で皆と一緒に倒れていたのだが、しばらくして僕は気づく。

 この状況、結構まずくないかなと。


 このテント、決して広くは無い。

 そこに水着プラスTシャツの女の子と雑魚寝している訳で。


 気づくと胸の膨らみとかがすぐそこに思い切り見える。

 胸が呼吸で上下していたりするところも。

 既に胸以外も体型が何となく女の子らしくなっているところも。

 狭いから思い切り腕は触れまくっているし。


 これはいかん。

 ゆっくりと起き上がってぬるい紅茶を飲んで……


 それでも落ち着かないのでそっとテントから出た。

 少し海水で冷やしてこよう。

 頭も身体も、色々と。

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