第9章 夏合宿はサバイバル

第138話 奨学生は金が無い

 夏休みはもうすぐ。

 そして合宿費用と小遣いの額とで悩む奨学生2人。

 まあ僕と彩香さんである。

 中でも彩香さんの窮状はかなりのものだ。


「夏の服とか水着を買ったので、大分厳しいです」

 彩香さんの食事が朝昼パン1個ずつになっている。

 流石にまずいので夕方だけは皆で集まり、調理した野草とか貰った野菜とか持ち寄ったおかず等を分け合って食べているけれど。

 これだと最低米代だけを負担すれば済むから。

 何せ節約以外にお金を生む方法が無い。

 中学生が出来るバイトなど無いし、この学校は高校でもバイト禁止だし。


「そんなに厳しいの?」

「合宿でいくら使うかわからないですから、出来るだけ余裕を持ちたいです」

 というのが彩香さんの意見だ。

 まあ基本的には僕も事情は同じ。


 なので。

「1日300円以下で生活出来る合宿を考えましょうか」

 と提案してみた。

 ちなみに1日300円とは現在の彩香さんの食費だ。


「無理だ」

 即座に先輩に却下された。

「交通費だけで足が出る。先生のバイエースは燃費がいいけれど、それでも1キロあたり10円はかかる。釣りだって餌代と仕掛け代がかかるし」

 まあそうだけれど、1キロ10円か。

 1人交通費1000円出せば、高速道路を走らなければ5人分で500キロ走れるな。

 往復を考えると日本海側もぎりぎり行けるか。

 ただ宿とかは無理だ。


 それに食事代。

 何とかサバイバル採取ができる処というとどうしても海沿いになる。

 山側だとタンパク質の補充が辛そうだからだ。


 それにこの学校の位置が微妙に色々恵まれている。

 海釣りにも行けるし食べられる山菜もあるし。

 この環境からわざわざ行くとなると、やっぱり相当魚が釣れるとか何か面白みが無いと。


 そんな事を考えて、ふとある事を思いついた。

 これは正直言って反則だ。

 間違いない。

 でもこれを使えれば間違いなく交通費と宿泊費が只だ。

 という訳で、こそこそとSNSで先方にメッセージを入れる。


 向こうも放課後で暇らしく、あっさり返事が返ってきた。

『そちらの未亜さんからも問い合わせあり。現在場所と日程調整中』

 なんですと!

 慌てて陳謝及びお礼のメッセージを送って。

「未亜さん、何企んでいるんですか」

と問い詰めてみる。

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