第128話 昔話の時間です
思い当たる事は1つしか無い。
裕夏さんに関してだろう。
でもそれを僕から言い出していいのだろうか。
わからない。
なので僕は黙っている。
少し沈黙の時間が続いた後。
もう一度未亜さんはため息をついて。
そして話し始める。
「わかっていると思うのです。裕夏さんの事なのです。自分でもわかっているのです。問題があるのは私。旧弊をひきずっているのは私なのです」
「どういう状況なんだ」
未亜さんはもう一度ため息をつく。
「ここがいわゆる狐系の学校だというのは話したと思うのです。
でも狐系でも術を使うのはそれほど多い訳ではないのです。
ほとんどは簡単な欺瞞とか隠行の術まで。
でも、中には魔術師というか、術使いが得意な人物なり家系なりがあるのです。
白、金、黒。その3色で魔術師の系統と家系を呼んでいて。
私は金の後釜、そして裕夏さんは黒の後釜でした」
なるほどな。
それで美洋さんは術を使えないけれど未亜さんは使える訳か。
そう思いつつ話を聞く。
「ただ私の家は一度里から出た家なのです。術の跡継ぎは母の兄に任せ、うちは大阪近郊の住宅地で普通の会社員をやっていたのです。私もそんな世界がある事すら知らずに育ったのです。小学1年の時、叔父一家が揃って事故死するまでは」
そう言えば未亜さん、自分の事を傍系で混血とか言っていたな。
「そんな訳でうちの家から術士の後継者を貰い受けたい。そんな話が里から来たのです。うちは兄妹あわせて子供が3人いましたので。母も父も乗り気では無かったのですが、私は乗り気でした。小学低学年にして厨二病というおませな子供でしたので」
なんだそりゃ。
そう思いつつも何となく今の未亜さんからも想像がつく。
そんな事を言うと怒られそうだけれども。
「そして私に適性もありましたので、その話はすんなり進んだ訳です。叔父の家は無かったので里の長の1人である美洋の家に居候する形で。居候と言いますが実の親以上に可愛がってくれたのは確かなのです。また術の勉強も才能というか素質があったのであっと言う間に身につけていって。
その術の勉強の先輩が裕夏さんなのです」
なるほど。
やっと人間関係の一部が見えてきた。
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