第52話 こんな物も釣れますよ

 10分程度だろうか。

 せわしない時間は突如終わりを告げた。

 ただその間にかなりの数の魚が釣れている。

 なおあの小さいカサゴは海に帰した。

 他に釣れた魚は取り敢えずバケツへ。

 隙を見てクーラーボックスの中に移すという感じ。


「20匹ちょっとですね」

 先生は釣れた魚を全部クーラーボックスに入れて、バケツの中の水を替えた。


「こんなに釣れると楽しいですね」

 うんうんと彩香さんも頷いている。

 僕もだ。

 これなら全員この釣り方で釣った方がいいんじゃないだろうか。


 そう思った時。

「よしっ!」

 背後でそんな声がした。


 1分後、先輩が魚をぶら下げて戻ってきた。

 僕らが釣った魚と違う、茶色い縞が入ったちょっと体高がある魚だ。


「その魚は?」

「タカノハダイ。という事でちょっと残酷だが失礼して」

 先輩はささっとエラのあたりを鋏で切って。

 そして魚の下の方を切って内臓を取り出した。

 更に水くみバケツで水を汲んで内臓部分を洗って。

 それからクーラーボックスに入れる。


「こいつはこうしないと臭い時があってさ。でも味はなかなか美味いんだぜ」

 そう自慢そうに言った時だ。


「バケツヘルプミーですよ」

 なんて向こうの方で未亜さんが言っている。

 なので中が海水だけのバケツを持ってとりあえず走る。


 行ってみると。

 タコだった。

 タコが堤防の端っこの段差の処にいて、じりじり逃げだそうとしている。


「本当はイカ狙いだったのです。でもこれも面白いからアリなのです」

 イカ用のエギでタコを釣ってしまったらしい。

 という事でおっかなびっくりでタコを掴んでバケツの中に入れる。

 そして2人で皆のところへ。


「タコは私も初めてですね。たまにエギでイカを狙うんですが釣れた事が無くて」

「私も初めてだな」

 皆で観察して。

 逃げようとするたびにいろんな物で中に入れ直し。

 最後はクーラーボックスの中にジップロックに入れて収納した。

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