第53話 賭けに成功!ただし仕掛け1本ロスト

 その後は未亜さんもサビキ組に合流。

 ただ未亜さん、仕掛けを投げるのが上手い。

 1人だけかなり先まで飛ばしたりしている。

「未亜はなにをやらせても上手いんですよね。何でも知っているし」

「世の中の偶然が味方しているのですよ」

 なんて言いながら。


 最初程では無いけれど時々魚も釣れていく。

 大体は鯖か鰯だけれども。


 ただ、未亜さんのサビキはなかなか釣れていない。

 でも本人は気にせず構えている。

 そして先輩は30分に1回位の割合で皆と違う魚を釣ってくる。

 ドンコという名の黒っぽい魚とか、ベラという黄色っぽい魚とか。


 そして。

 未亜さんのダブルになっているウキのうち、片方が沈んだ。

「よし、ゲーム開始なのです」

 未亜さんがにやりと笑う。


「というか、未亜のはどういう仕掛けなんですか。サビキだけれどウキが2個ついていたりおもりが2箇所あったり」


「この場で適当に考えた怪しい仕掛けなのですよ。名付けて2段構え。上手く行くと楽しい魚が釣れる予定なのですが」


 その時。

 ささーっとウキが流れて、そして沈んだ。

 未亜さんがガッと竿を立てる。

「ヒーット!」

 最初はガシガシとリールを巻いた。

 でも結構引いているようだ。

「仕掛けが細いからあまり無茶引きできないのですよー」

 なんて言いながら慎重に。

 でも確実にひいては竿を下げを繰り返していき。


 先生が網を用意して。

 近づいた瞬間さっと掬った。


 うん、今まで釣ったのと全然違う。

 大きい。

 60センチ以上あるな。

 リールを緩めてよいしょと堤防の上に置いて。

「あー、仕掛けがいい加減だからもうこれ使えないですね」

 針がいっぱいある仕掛けなので、絡まったり魚に引っかかっていたりしている。


「これだけ大きいのを釣れば充分ですよ。この仕掛けは安売りで買ったから100円しませんし」

 先生がペンチと鋏で仕掛けを外していった。

 切った針と糸をまとめてゴミ用ビニール袋に入れて。

「スズキですね。ここで釣ったのは初めてです」


 バケツに入らないので。

「残酷ですけれど、ここで血抜きをしますよ」

 と先生がエラを切って絶命させ、バケツに逆さに入れる。


「血を抜いてからクーラーボックスにしまいますよ。その方が後で美味しく食べられますから」

「ひひひひひ。小魚を餌にすれば大きいのが来るかなという賭けだったのですよ」

 なるほどな。

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