第45話 よってたかってお料理中

 理化学実験準備室のシンクは広くて深い。

 野草を洗うには大変適している。


 僕が洗った蕗を2人が葉っぱと茎に分ける。

 終わったら葉っぱはとりあえず保留。

 茎は塩をまぶしてまな板の上をごろごろ転がす。

 この作業を板ずりというそうだ。

 そして茎も別の鍋で茹でる。


 この部屋の実験用ガスバーナーは見た目にも火力が強い。

 あっさりとお湯が沸く。

 5分位したらどっちも火を止めて水にさらしてと。


「悠さんは葉っぱを刻んで下さい。彩香さんは私と一緒に茎の皮を剥いて下さい」

 美洋さんの指示で作業をすすめる。

 と、不在だった川俣先輩が部屋に入ってきた。

 手には地元スーパーの白い袋を持っている。


「鶏の挽肉。こいつが入った方が個人的には美味しいと思うぞ。鶏肉が苦手なら別だけれどさ」

「すみません、ありがとうございます」

 フキという言葉と用意してある材料で何を作るかを読み取った後。

 わざわざスーパーまで階に行ってきたくれた訳か。

 流石先輩。


「ならまもなく葉っぱの方を刻み終えると思いますので、先輩そちらの方の調理お願いしてよろしいですか。鶏肉は茎用にも残していただけると嬉しいです」

「了解。葉っぱの方が少なめで大丈夫だろ」

 という事で、葉っぱを刻んだ後は僕と先輩が選手交代。


「葉っぱの方が佃煮、茎の方が煮付けでいいな」

「その予定でした。ありがとうございます」

「なら茎の方も下準備だけしておくぞ」

 先輩は大きい鍋をそれぞれガスバーナーにかけ、鶏胸挽肉を投入。

 油を敷かないで直接炒め始める。


 そして小さい鍋に刻んだ葉っぱを入れ、まな板を洗って。

「そろそろむき終わりそうだからまな板を渡すぞ」

「ありがとうございます」る


「そして炒まったお肉の一部をこっちに入れて、だ」

 大鍋の方は火を止め、そして小鍋の方に火を付け。

 小鍋の方はお肉を葉っぱと混ぜながらみりんと醤油を入れた。


「こんなものかな。普段は蕎麦つゆで手抜きするからなあ」

「あ、そうすればもっと簡単なんですね」

 先生は自分の仕事をやりながら時々こっちを笑顔で見ている。

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