第2章 この学校の片隅で
第38話 気恥ずかしい合意事項
「正直これからお願いする事は個人の自由な選択とかそういう事に反していると思います。でもどうしてもお願いしたいんです。
私と一緒に野外滑動部に入って下さい。お願いします」
そう言って竹川さんは、椅子に座った姿勢では最大限に頭を下げる。
「そんな頭を下げないで下さい。頼まれなくても入部するつもりだったし」
隣で栗原さんもうんうんと頷いている。
「そうですか。ありがとうございます。嬉しいです」
そう言って竹川さんは今度は軽く頭を下げた。
「実はあの場の雰囲気がどうしても気に入ってしまって。それに3人いれば同好会として存続できますし。
ところで仲代君と栗原さんは元々のお知り合いですか。とても仲がよさそうにお見受けしたのですが」
いやいや滅相も無い。
ちょっと嬉しいけれど。
「元は教室で前後ろの席になっただけです。周りが内部生ばかりで話す相手が他にいなくて」
取り敢えず無難かつ事実の説明をしておく。
「そうなんですか。何か申し訳ないです」
ん?
ちょっと疑問。
「何故竹川さんが謝る必要があるんですか」
「少しは私の家の責任もあるような気がして」
僕にはその言葉の意味がわからない。
何か前に先輩が言っていた事と関係があるのだろうか。
「でもあの身内のルールで固まっている雰囲気が私は好きでは無くて。それで内部生の多い活動を避けて野外活動部を選んだんです。そうしたら何かとっても楽しくて。
だからあの場所をどうしても確保したかったんです」
背景の理由は今一つわからない。
でも何となく、竹川さんがどういう思いなのかは理解出来た。
「ではこれから宜しくお願いします」
「こちらこそ」
僕は頭を下げる。
そして。
「あとお願いなのですが、出来ればお互い名前で呼びませんか。
実はそういう関係、憧れだったんです」
と竹川さんが申し出。
うーん。ちょっとこれは気恥ずかしい。
でもお願いと言われると……
「わかった。よろしくね、美洋さん、悠君」
あ、栗原さんが受け入れてしまった。
ならやむを得ない。
「わかった。よろしく。美洋さん、彩香さん」
だったよな、栗原さんの名前は。
「私も宜しくお願いします。悠さん、彩香さん」
あっていた模様だ。
ちょっと安心。
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