第31話 狐火に害は無い?
向こう側の入口からテント内へとその光は入ってきた。
間違いない。
火の玉という奴だ。
でも熱は無さそうだ。
テントに異常が無さそうだから。
金縛りに遭ったように動けない。
本当の金縛りなのかどうかもわからない。
でも目だけは動く。
火の玉を観察し続けている。
火の玉はぐるっとテント内を廻って。
そして向こう側の入口の方をまたしばらくふらふらした後に。
ふっと姿を消した。
そしてテント外を去って行く気配。
人とか動物の気配ではない感じ。
僕は思わず叫びだしそうになる。
その時。
僕の横に寝ている人がこっちを向いた。
言うまでも無く川俣先輩だ。
目が開いている。
今のを見ていたのだろうか。
「大丈夫、今のは害はない。心配して様子を見に来ただけだな、お姫様のさ」
ささやき声でそんな事を言う。
「何なんですか。今のを知っているんですか」
僕も出来るだけ小さい声で尋ねる。
「ああ。よくある狐火だ。基本的に害はない」
先輩はそうさらっと言って。
「だから安心しろ。詳細は後日」
そう言ってまたくるっと向こうを向いてしまった。
何だったんだろう。
狐火?と先輩は言っていたが。
害がないって何故わかるんだ。
夜中だが目が馴れていればそれなりに見えない事もない。
少なくともテントの壁の様子ははっきりとわかる。
今のが本物の火ならテントの布地は焼けるか溶けるかしている筈。
でも何ともなっていない。
色々疑問を抱え込んだまま。
僕はやっぱり眠れないままだった。
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