第30話 眠れない夜

 その後。

 鍋や食器を台所へ持っていって洗った後。

 家の鍵を閉めてテントの中へ。


 丸く座ってUNOやハゲタカの餌食なんてカードゲームで戦った後。

「今日は疲れたでしょうから、そろそろ就寝しましょうか」

 という事で寝袋を広げる。


 なお枕は寝袋の袋等に先生供給の雨具とかタオルとかを入れて作っている。

 キャンプ等では着替えを使うとの事だ。


 そんな訳で皆で横になったのだけれど。

 眠れない。


 端っこで良かったとは思う。

 両側が女の子だったら間違いなくもっと緊張しただろう。

 そうでなくともちょっと固まっている。

 既に誰かの寝息が聞こえているし。


 寝袋の中にもぐってスマホを見てみる。

 時間はまだ20時過ぎだ。

 これは確かに眠れないよなとふと思う。


 スマホを消して寝袋から少し顔を出す。

 何か女の子っぽい匂いがするような気がする。

 わかっている。

 気のせいだ。

 そう思っても……


 僕以外の寝息が聞こえる。

 この方向と感じからしてこれは栗原さん。

 でもその隣の竹原さんも既に熟睡中だな。

 寝息でそんな事までわかる訳で……


 寝袋の中でスマホを起動して再び現実逃避。

 そんな事を何回か繰り返す。


 先輩は寝息をたてずに寝るとか。

 竹川さんは時々いびきをかくとか。

 先生はいびきはかかないが寝息だけでもけっこうな音量だとか。

 そんな必要ない知識ばかり増えたところで。


 記憶が確かなら22時12分から3分位後。

 僕はそれに気づいた。


 最初は誰かがスマホをつけたのかと思った。

 でも光の角度が違う気がする。

 懐中電灯と違うような気もする。

 明かりが近づいてくるような気がする。

 足音とか一切無いけれど。

 そして……

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