第29話 普通なのか異常なのか

 そうこうしているうちに。

 あたりは大分暗くなってきた。

 でもガスランタンのおかげでテーブルの上そのものは明るい。


 鍋はぐつぐつ茹だってきた。

 カレーの鍋の方は少し火を緩めて、御飯の方は強火のまま。

 野菜が煮えたところでカレールーを投入。

 御飯の方は先生が、

「今です。火を消して」

というところで火を消して蒸らした。


 カレーにとろみが出たところで火を消す。

 軍手を付けて御飯の蓋を開けたところ。

 もわっとした熱い水蒸気が出て、カニ穴が開いた綺麗に炊けた御飯が見えた。


「すごい、ちゃんと炊けています」

「実は炊飯器より早く炊けますしね。私は普段でも鍋で炊いたりします」


 栗原さんが御飯を盛った後。

 竹川さんがカレーをかけて。

 丸や四角の様々な食器に入ったカレーが配られた。


「それでは、いただきます」

「いただきます」

 と皆で食べ始める。


 食べようと手に取ると暗くてカレーが見えない。

 なのでヘッドライトをつけて食べる。

 うん。カレーの味。

 多分普通の味なんだけれど、こうやって食べると美味しい。


 付近は暗い。

 高台にあるせいか他の家の明かりがほとんど見えない。

 遠くに街灯がともっているの位だ。


「何かいいですね。こんな感じって」

 というのは竹川さん。


 横で栗原さんがうんうん頷いた後に。

「でも明日あたり筋肉痛になりそうです」

なんて言っていたりする。


 筋肉痛と聞いて、先輩がとんでもない事を言っていたのを思い出した。

「そう言えば先生、この家から学校まで歩いて通うことがあるって本当ですか」

「ええ。天気が良ければ。月曜に車で学校に着替えを置いて、通うから木曜日までは走るんです。金曜に車で汗をかいた服とかを一式持って帰って洗濯。

 ここから学校まで走って1時間ちょっとですね」


 げっ、という顔で栗原さんが先生を見た。

 先輩から聞いていたけれどやっぱり色々驚異らしい。


「いや、大した事じゃないですよ。大学時代から1日20キロは走っていましたし。それに火曜から木曜の週3日だけですから」

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