第20話 目的地は坂の上

 そこそこ広い2車線道路。

 その横にそびえるどう見ても5メートル以上はあるコンクリの壁。

 道路からその上に向かっていくコンクリ滑り止め舗装の道。

「この坂が最後、右の赤い屋根の2階建てが目的地、先生の自宅だ」


「先生ってこちらが実家だったんですか」

 確か加茂先生の実家は東京だったような。


「いいえ。ここは私が買ったんですよ。安かったので、つい」

 おいおいおい。

 家って安かったからつい買うものなのか?


「まあ詮索は後だ。行くぞ」

 そう言って先輩を先頭に歩き出す。

 坂を登りだして僕は気づいた。

「この傾斜、なかなかじわり来ますね」

 このそこそこ急な坂が足の筋肉を嫌らしく攻めてくるのだ。

「だから言ったろ。最後が一番きついって」


 その横を先生が走って行く。

「お風呂沸かしておきますから。ゆっくりどうぞ」


「まだあんな体力あるんですね……」

 栗原さんだけで無く竹川さんも、そして僕も。

 脅威の目で先生を見てしまう。


「甘いぞ新人諸君よ。先生の恐ろしさはこんなものじゃない」

 先輩だけはにやにや笑っている。


「それに今のルート、今でも時々先生は通勤に使っているぞ。トレーニングとか言ってさ。月曜日に学校に着替え置いて、あとは今のコースかその変形を歩いたり走ったりしてくるんだ。

 今回は休憩入れて5時間かけたけれど、先生はこれを1時間ちょいで来るらしい」


 おいおいおい。

 それは化け物か。

 僕以外の2人も絶句している。


 まあそんな感じで先生のお宅に無事到着。

 庭はかなり広い。

 テント数張りは余裕で立てられそうだ。

 この立地条件だから周りの家から覗かれることも無いし。


 家も2階建てで決して狭くなさそう。

 そして濃青の1BOX車が止まっている。


「この車も先生のですか」

 トヨダのバイエース。

 色が白ければ工務店の車だ。

「ああ。広くて人数乗れて燃費がいいって先生のお気に入りだ」


 うーん。

 イメージ的に若い女性の車では無いような。

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