第19話 初めてだと結構ハードです

 そこからは登りもあれば下りもあるという感じ。

 送電線を超えたあたりから道が良くなった。

 鉄の網で階段が作られているところもある。


 ただ階段の方が楽という訳では無い。

 自然な道だと登り方で歩幅を狭くしたり段差の高さを工夫出来たりする。

 でも階段は必ず一定以上の段差を要求されるのだ。

 栗原さんがとっても大変そう。

 個人的には自然な道の方が楽だと思う。


 でも尾根道だから所々景色がいい。

 30分くらい歩いてまた栗原さんが無口になりかけたところで。

「ここが最初の山頂、乳頭山山頂です。狭いから本格的な休憩はもう少し先でしますけれど」


 木々が茂っていてあまり明るくない。

 人も一杯いるし。

 でも一方向だけ、視界が開けていて遠くまで見える。

「あれが横浜ベイブリッジ、あそこが千葉市、あちらが千葉の山って感じかな」

「結構見えるものですね」


 なお栗原さんは無口だ。

「ほれガソリン」

 先輩から今度は小さいパック入りゼリーが回ってきた。

 これもいいな。

 喉にいい感じ。

 栗原さんもちょっと機械的な動作で食べている。

 手がふらふらしているのでゴミだけさっと受け取った。


「人が多いので少し下りたところで休憩します。もう少し頑張って」

 栗原さん、一応頷いた。

 そんな訳で。

 今まで稼いだ高さが勿体ない位下りたところで。

 やっと小休止した。

 栗原さん、ぺたっとレジャーシートに伸びる。


 ◇◇◇


 そんな感じで更に歩いて。

 次の休憩で昼ご飯。

「ここは古戦場だから首無し武者が出るらしい」

 なんて先輩が脅して。

「私が見る限りは見えないようです」

 なんてわからないつっこみを竹川さんがして。


 そこからはずっと下りだった。

 下りて下りて下りてという感じ。

 登りより下りの方が何気に足の筋肉に響くというのに気づいたころ。

 やっと人家の屋根の高さあたりまで下りてきた。

 そこで小休止。

 例によって栗原さんが座り込む、

 ラップで包んだキウイフルーツを先輩が配ってくれた。

 寮で切ってきたらしい。


「本日のスペシャルな差し入れ。心して食え」

 確かに。

 これは異常に美味しい。


「あー」

 何か栗原さんからため息のような声が漏れている。

 ゾンビが少し生き返ったという感じだ。


 先輩が宣言する。

「ここが最後の休憩だ。

 ここから目的地まではゆっくり歩いても30分かからない。

 最後の坂以外は全部ゆるい下りだ。

 ペースもなかなか順調に来ている。

 目的地には風呂もシャワーもある。

 だから頑張るぞ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る