第18話 尾根への急坂

 確かに。

 いきなり急な登りになった。

 最初は水がない沢をえっちらおっちらのぼっていく感じ。

 栗原さんは小さい分1つ1つの段差をのぼるのが大変そうだ。

 足のリーチを目一杯使っているように見える。


 そんなハードな登り15分少々。

「お疲れ様でした。本日一ハードな部分終了です。まだ登りも下りもあるけれど、今よりはきつくないから大丈夫です」

 でも栗原さんの目がちょっと死んでいるような。

 僕も何気に結構疲れた。

 服も汗びっしょりだ。


「そんな訳で一時休憩。はいチョコ」

 先輩からチョコの配給。

 これが結構疲れに染み渡るように効くのが不思議だ。


「チョコは美味しいけれど、しんどいです」

 ほんの少し栗原さんが生き返った。


「まだ甘いぞ。私の経験からして一番しんどいのは最後の最後の坂だ。別名が『心臓破りのコンクリ坂』」

 出る前も似たような事を言っていたな。

「何ですかそれ」


「行けばわかる」

 先輩の目がニヤニヤしている。

 僕はペットボトルに直接口をつけて飲みながらふと気づいた。


「何なら栗原さんのザックの水、僕が持とうか」

「まだ大丈夫です。でもありがとう」


 一方、竹川さんの方はまだまだ元気な感じだ。

 多分身長というか足の長さの違いだと思う。

 同じ段差を登るのでも、足の長さで角度が大分変わる。

 栗原さんはもう、目一杯で登っている感じ。

 他の人はそれと比べると大分余裕がある。


 10分位くたっと休憩した後。

「さて。ちょっと辛いかもしれないけれどまた行きますよ。あまり止まっていると筋肉が冷えて動きにくくなってしまいますから」

「もう大丈夫です」

 栗原さんが自分のザックを引き寄せる。


「ならいくぞ」

 先輩が宣言。

 再び歩き始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る