第17話 林道終了

「あ、あれリスです」

「どこどこ」

「右、川そばの倒れている木の向こう岸!」

 猫よりちょい小さい灰色っぽいのがでっかい尻尾背負って走って行った。


「あれがタイワンリスですね。特定外来生物ですから餌付けとかは禁止。でも見る分にはかわいいですよね、やっぱり」


「ただ『かわいい』なんて言うとさ。変な蘊蓄たれてマウントしてくる奴がいるから注意しろよ。『かわいいという感想』と『有害生物でいるべきでは無いという認識』が両立する事に気づかない了見の狭い原理原則主義者がいるんだ。まあ『可愛いから有害でも駆除してはいけない』なんてトチ狂った保護主義者がいるのも悪いんだが」


 そんな感じで歩いていると。

 ベンチがあってちょっと広くなっている場所に出た。


「ここで林道は終わりです。この先狭くなったり道が滑りやすくなったりします。注意して下さいね」

 先生がそう説明。

 確かにその後、道が一気に狭くなった。

 砂利道から土や石の道へ。

 所々川そのものを歩いたりもする。


「何なら差。靴を濡らすの覚悟で水の中を歩いた方が滑りにくいぞ」

 なんて言いながら川俣先輩はジャブジャブ歩いている。

 楽しそうなので真似。

 うん、こっちの方が楽しい。

 涼しいし気持ちいいし。

 それに確かに水際より滑りにくい。


「それにしてもここの川は流れが緩やかですね。水は綺麗だけれど」

「傾斜がとっても緩やかなんだよ。固い地盤の上の一枚岩って感じでさ」


「本格的な沢登りがしたいなら、水が温かくなった頃どうですか。いい場所があるんですよ。この人数なら余裕で私の車に乗れますし」


「これでも充分楽しいです」

「こんなものじゃないぞ。本格的な沢は。泳ぐし滝を登るし何ならウォータースライダーなんてのも出来る」


「それは楽しそうですね。次は是非」

「私は運動神経ちょっと自信無いんです。滝とかのぼるの大丈夫でしょうか」

「ちゃんとロープで確保するから大丈夫だ」


 なんて20分位気持ちよく川歩きを楽しんだ後。

 沢が左に別れたところでまた小休止。

「さあ、ここからが本日一番ハードな部分ですよ」

 と先生が宣言した。

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