第7話 喋る機械は苦手です
その後色々とまあ学校生活の諸注意みたいな話も聞いた後。
僕と栗原さんは理化学実験準備室を後にした。
そして、その後すぐ。
「仲代君、ちょっとお願いがあるんだけれど」
栗原さんがそんな事を言う。
「何だい?」
「お金を下ろすATMの使い方ってわかりますか」
「わかるけれど」
時々母に頼まれてお金を下ろしたりしたから。
「良かった。私、実は機械が苦手で。だから手伝ってくれればとってもとっても助かるんです」
そんなのは簡単だ。
でも。
「あれは暗証番号とかあるし、自分でやった方がいいんじゃないかな。簡単だし」
「正直言うと私、ああいう機械が生理的に怖いんです。何か喋られるとどきっとします。実は昨日も試してみようとしたんですけれど怖くて。
ただもう生活費が少ないので、出来れば今日こそATMに挑戦したいんです」
うん。
理解出来ないけれど理解した。
「ならいいよ。でも本当にいいの。暗証番号なんて知られたら勝手にお金を下ろされるかもしれないんだよ」
「仲代君なら信じても大丈夫そうですから」
ん。
おい。
おちつけ自分。
今のは好意とかそういうのじゃない。
単にぼっちが苦手な分野を同じぼっちに頼んでいるだけだ。
そうは思っても。
やはりクラスメイトの女の子。
それも可愛い子に言われると悪い気はしない。
「ならいいよ。厚生棟のところだよね、ATM」
という感じで2人で向かう。
厚生棟にはATMは2台。
カードの銀行名を見て手数料のかからない方を選択。
周りの視線が気になりながら。
ATMが喋るたびに栗原さんがびくっとするのを観察しながら。
無事1万円を下ろすことに成功した。
「良かった。これで今日は夕食が食べられます」
まさか。
「昨日はお金が無くて夕食抜きだったとか」
ここの寮では夕食と朝食は自由。
カフェテリアでとるか厚生棟の売店で弁当を買うかだ。
「かろうじてパン1個は買えました。でも今日の残金が23円しか無くて」
うーん。
なんだか放っておけないな。
でもどういう生活をしていたんだろう。
喋る機械ってそこら中にあるような気がするし。
そんな事を考えつつ。
一緒に夕食の弁当を購入。
寮の入口で栗原さんと別れた。
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