第8話 2人ぼっち2日目

 午前8時10分。

 寮から登校だから楽といえば楽だ。

 歩いて5分以内で教室に着く。


「おはようございます」

 栗原さんはもう着いていた。

 早速僕の方を向いて挨拶してくる。


「おはよう」


「ねえ、課外活動はもう決めたでしょうか?」

 早速その話か。


「昨日パンフを一通り読んでみた。でもまだ決めていない」


「それでなんですけれど」

 栗原さんはカバンから例のパンフレットを出す。

「黒でチェックしたところが、昨日川俣先輩が言っていたところだと思います」


 2ページ目の公認課外活動一覧に、色々とチェックがしてある。

 黒のチェックがあるのは

  ○ 近接格闘技研究会

  ○ 民俗学研究部

  ○ 神道研究会

  ○ 欺瞞術式研究会

  ○ 式占研究会

といったところ。

 確かに微妙に色々怪しい感じだ。


「あと私達はお金がかかりそうなところも駄目ですね。奨学金でまかなえませんし。これは赤チェックです」

  ○ 国内旅行研究会

  ○ 海外旅行研究会

  ○ ワンダーフォーゲル部

という感じのところに赤チェックが入る。


「それであとは相談なんですけれど。

 正直なところ私、1人では色々不安なんです。実は1人だと電車の切符を買うのも不安なくらい機械が苦手ですし。

 他にも出来ない事が実はいろいろあると思うんです。本当は1人で全部出来なければおかしいのですけれど」


 昨日のATMでの件を見ているから冗談とは思えない。

 でも。


「なら学校まではどうやって来たの」

「学校までは付き添いの方に面倒を見て貰ったんです。飛行機から学校の寮の入口まで、全部一緒にいた方に色々やって貰いました」

 冗談のようだ。

 でも少なくとも機械が苦手なのは確認済み。


 面倒だと思う人もいるかもしれない。

 でも頼られていると思うと悪い気がしない。

 それがクラスメイトで可愛い異性だったりするとなおさらだ。

 どうせぼっちで暇だし。


「なら課外活動は一緒に選ぼうか」

「すみません。ありがとうございます」

 栗原さんは頭を下げる。

「いえいえ」


 そこでチャイムの音。

 朝の微妙に楽しい時間は終了だ。

 何せ小学校時代はわりとぼっちだったのだ。

 どうも元々僕の住んでいた辺りの空気は色々肌が合わなかった。

 なので相手が1人でも結構楽しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る