第2話 ぼっちな仲間

 僕は周りを再度観察してみる。

 前の席の女の子も中学からの組らしい。

 一番前の女の子は動きからして持ち上がり組。

 出席番号3番なのに一番前の席なのは役員候補なのだろう。


 この学校はなかなか厳しい。

 クラスも出席番号も成績順だ。

 成績順にA組、B組とクラス分け。

 そしてクラス内の出席番号も成績順。

 席順も今は出席番号順だ。


 ちなみに僕は2番。

 つまり僕より成績が上なのは1名。

 目の前に座っている女の子だ。


 わりと小柄。

 少し茶色い髪のポニーテール。

 横の髪を少しだけ束ねないでそのまま肩くらいに伸ばしている。

 向こう向きなので顔は見えない。

 服も制服の長袖ポロシャツだし。

 黒縁の眼鏡をかけているのだけはわかるけれど。


 と、僕が彼女の事を考えていたからという訳ではないだろうが。

 彼女が僕の方を振り返った。

 内心ドキリとしたのは何とか態度に出さずに済む。


「どうも。初めまして。栗原彩香くりはらあやかと言います」

「初めまして。仲代悠なかしろゆうです」

 とっさにそう返したが、返事はそれで良かったのだろうか。


 栗原さんの顔を見る。

 小さめの顔。

 丸っこくて大きい目。

 可愛いと言っていいだろう。

 目を合わせるのが恥ずかしくてちょっと視線を下に向けた。

 栗原さんは続ける。


「周りが内部進学でグループ出来ていて。私の廻りでは仲代君は違う感じだったので、つい話しかけてしまったんです。仲代君も中学からですよね」

「ええ。栗原さんも」

「ええ。ちょっとお金に余裕が無くて、奨学金に釣られたんです」

 思わず親近感を覚える。


「同じ。僕も奨学金。どうしても地元の公立に行きたくなくてさ」

「とすると、30パーセントの呪縛の仲間ですね」

 30パーセントとは無償奨学生の条件だ。

 1年生は総数70人だから21番以内。

 これをキープしないと無償奨学金から外されてしまうのだ。


「まあ生活費まで面倒見て貰えるんだから仕方ないけれどさ」

 奨学金には寮での生活費も含まれる。


「でも必要最小限らしいですけれど」

「まあくれるだけありがたい」

「そうですね」

 そんな事を話しているとチャイムが鳴る。

 8時20分。

 ホームルームの時間だ。

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