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「兄さんはその後ももう少し店開けているんですよね」

「そ、うちは女の子居ないしね」

「働きすぎなんじゃないですか?」

「だから疲れて死んだ魚みたいな目してるって?」

「根に持ってる?」

「俺みたいなので働きすぎなんて言ったら、他の人は屍になるくらい働いてるよ」

 なんたって俺は自由業だしね。

「いやいや兄さんのお店って凄く人気あるし、うちのお客様もよく行っているって聞きますし」

「まじ?」

「まじ。だから働き過ぎなんですよ」

 “過ぎ”かどうかは分からないけど、これでもそれなりに頑張って店開けてますから。

「そんなお疲れの兄さんに、元気の出る魔法をかけてあげましょうか」

「え、そんなのあんの?」

「もちろんっ。兄さん、良く見てて」

 二ィっと笑ったピクシーはギュッと握った小さな拳を目の前に出してきた。何の変哲もない女の子の手だ。まさかここから何か出てくる? とか?

「はい、ワン、ツー、スリー」

 ピクシーがカウントしてその手をパッと開く。え、えぇ!? 予想外だよ!

「何にもないじゃんっなにそれ」

「くくく、笑いましたね。ほら、元気になった」

「う」

 やられた。そう言うことかよ。

「じゃ、あたしもう行きます。お仕事頑張ってくださいね」

「お前もな」

 ったく、なんて魔女っ娘なんだ。

「あ、そうだ。右ポケット、洗濯する時は気をつけてくださいね」

「え?」

 そう言われて去って行くピクシーを横目にジャケットの右ポケットに触れてみる。中に何か入っている?

「ふ」

 ポケットの中には一粒のチョコレート。いつの間に。

「あ~頑張るか」

小さな妖精のおかげで今日の仕事も頑張れそうだ。

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