元気の出る魔法
カゲトモ
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「ふぁぁぁああ」
あぁ眠い。
大きすぎるあくびって一瞬呼吸が止まるのなんでなんだろう。酸素が足りないからあくびが出る、なんて言われているのに呼吸が止まるなんて本末転倒なんじゃ? いや、もしかして酸素が足りないからって言うのがデマなのかも? 眠いとあくびが出るし。っていうか眠さと酸素の量って何か関係があるんだろうか、ってどうでもいいわ。そんなこと。とりあえずあくびが止まらなくて、眠い。寝る前に調子に乗って深夜帯の映画を最後まで見てしまったからだろうな。だって面白かったんだもん。
ダメだって分かっているのについ観てしまうの、なんでなんだろう? 理解はしているのに身体が動かないっていうか、風呂に入りたいと思っているのにテレビの前から動けないっていうか。疲れてんのかな?
「疲れてるんですか?」
「え」
ぐいーっと伸びをしていた背中から声を掛けられた。パッと振り返っても人影がない。
え、誰?
「どこ見てるんですか、こっちですよっ兄さんっ」
「あ、あぁ」
丁度上げていた腕で死角になっていた背後に飛び跳ねる小さな影。てっきり妖精の声が聞こえたのかもと思っちゃったじゃん、なんて。
「ピクシーじゃん」
「こんちわ」
声を掛けて来たのは珍しく私服姿のピクシーだった。こいつもこんな時間から出勤か?
「マザーのお使いがあって、これから出勤なんですよ」
「へぇ、お疲れ」
「お疲れは兄さんでしょ? どうしたんですか、そんな死んだ魚みたいな目をして」
死んだ魚っておま。
「あ、でもそれはいつもと変わらないか」
「なんでだよっ」
ついツッコんでしまうわ。仮にもバーテンダーだぞっ。死んだ魚みたいな目で仕事できるかっ。
「ジョーダンですって。でも本当に疲れてるみたいだから」
「疲れてるってわかる?」
「わかりますね~めっちゃ」
「まじかー」
ん~やっぱり夜更かしはするもんじゃねぇな。顔洗って、いやホットタオルの方がいいか? 仕事前にちょっとでも顔から疲れを取っておかないと。辛気臭い顔のバーテンダーから酒なんて受け取りたくないだろ。
「仕事前にちょっとだけ仮眠するわ」
「寝不足ですか?」
「そー」
「寝不足は美肌の大敵ですよ! マザーにもよく言われますし。あたしも徹底されてますから。うちの就業規則に早寝早起きとかあるんですよ」
なにそれ。マジックバーウィッチ凄い。
「お肌の不調はマジックでは消せませんからね・・・」
「なるほど。だから営業時間十二時までなんだ」
「そうですね。あと、十二時って何か特別だから」
「特別?」
「シンデレラの魔法が切れちゃうのも十二時でしょう? マザーってロマンチストだから。そういう所も可愛いんですけど」
お前んとこのマザー見た目めっちゃ魔女だけどな。魔法みたいにマジックするし、綺麗すぎるし。あの人は多分半分くらい本当に魔女だと思う。
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