新型コロナウィルス対応問題の本質

 現在、過去に例の無いほど騒がせている問題と言えば新型コロナウィルスだろう。そして2/28に日本政府が全国の小中高校を翌日である29を最終登校日として、春休み明けまで一ヶ月以上の休校とするように一斉に公布したことで世間は一気にパニック化した。


 それはそうだろう。学校の教員とて一般人と共に報道でその情報を知ったくらいだ。しかもその報道も授業が終えた夕方に放送され、『翌日を最後の登校日にする』と発表されたものだから学校側も何が何だか訳が解らない状態なのだ。


 すわなち、学校側の混乱は一般家庭より深刻と言えよう。普通に考えてまず頭に過るのが期末試験が実施できないのをどう対応するかだ。春休み明けにすぐ実施するにしてもクラス毎に授業の進度が違うのでその調整はどうする?とにかく問題は山積みだ。


 そして、休みが一ヶ月以上になるとなれば小中高とも一定の学力を維持させるためにそれ相応の宿題や課題を生徒たちに与えなければならない。いやいやいや、職員会議を開く暇すらなく翌日しか登校できない生徒たちに何の課題を与えれば良いのだ。教師たちの苦悩は誰でも想像できよう。


 私の想像では恐らく大半の学校で終業式、卒業式は実施せず、1年生2年生においては最終期末試験は来期の最初の中間試験と合わせて拡大範囲で実施するだろうと予想する。そして、自宅での自主勉強用の宿題や課題は休みに入った後、1週間ほど遅れて郵送されるのではないかと考える。


 ここまでどうしようもない事態に陥れば打てる手は限られるので予想もしやすい。


 学校側の問題としたら、後は保護者への説明がある。いや、保護者たちが説明の準備ができるまで待ってくれたらまだ良いが、学校や学童保育を頼りに共働きしている家庭や、シングルマザー、シングルファザーの方たちはこぞって学校に電話を掛けまくるに違いない。


 私とて実際にそういう立場なら安易に同じ行動をとってしまうかもしれない。


 何故なら今の企業の大半はそう易々と休まれては困る状況にあり、仮に『こういう事態なので申し訳ないですが、子供の世話のために有給を取らせてもらいます』と言っても九分九厘通用しないからだ。


 何故突発的な休みが通用しないのか?


 皆さん想像して欲しい。


 例えば病院、あるいは老人ホームが解り易いだろう。


 モノを作る工場や、営業などと違いこれらの業種は地震、雷、火事が起こっても操業を停止することは出来ない。学校のように休校することも不可能だ。


 何故なら新規の受け入れを停止することは出来ても、その時に施設にいる患者さんや利用者さんをどこかに追いやることが出来ないからだ。


 寝たきりで自分で食事も取れない老人に『新型コロナウィルス拡散防止のため営業を停止しますので、申し訳ありませんが各々自分で生活してください』と言えというのか?


 それでも日本政府はこう発表した。


『発熱があっても重症でなければ病院に行かず自宅待機をして欲しい』


『37度5分以上の熱があれば出勤せずに自宅で休養を』


『企業は申し出た社員に即座に有給休暇を取ることが出来る対応をするべし』


 例えば、老人ホームの経営ならば国が定めた介護保険制度により、20人前後の職員に対し一人ないし多くても二人しか余剰人員を抱えることが出来ない現状をつくっている。もちろん二人の余剰人員とは赤字覚悟の上でだ。


 大半の施設では一人でも休まれたら通常のサービスが提供できないというのが現状である。二人休まれたら入浴もさせられない。それ以上に休まれたら排泄介助や食事介助にも影響がでる。ギリギリまでオムツを替えない、飲み込みが悪い利用者は途中で食事を中止する。実際にその対応をするしかなくなるのだ。


 だから病院も老人ホームも熱があろうが、腰を痛めようが無理して出勤している職員が多い。台風で休校になっても小さな子供を一人家に残して出勤する職員も山ほどいるだろう。


 政府はそういう実態を知った上で平気でそのような発言をするのだろうか?


 多分考えないようにしているのだと思う。


 建前『37度5分以上の熱があれば出勤を控えるべし』


 本音『あくまでもそれが可能な範囲でのことだ』


 こんな感じなのは間違いない。


 営業を停止することができないのは病院や老人ホームだけではないだろう。ギリギリで操業している中小企業などはどうすれば良いのか?


 社員が大量に有給休暇を申請したので政府の指示通りそれを認めたところ元々ギリギリだった運転資金が底を尽き廃業となりました。


 ロボットのようにその成り行きをそのまま見過ごすことができる経営者などどこにもおるまい。


 カツカツの自転車操業を余儀なくされている大半の中小企業の社長は恐らく社員にこう言うと思う。


『職を失いたくなければ、熱があろうと動ける限りは会社を休むな!』


 これが結論であり本質である。


 恐らく零細企業は『出勤出来ない』という社員やパートに対し最低限それを認めたとしても有給扱いにはしない。『給与ゼロでも良いなら休め』これが限界だ。だから大半の社員は生活のために新型コロナを拡散する危険があっても、自分に移ってしまう危険があっても無理して出勤する。なので余程の事が無い限りみんな休まないので操業もそのまま継続されるのだ。


 ネット上ではテレワークだの何だのと余裕のある企業の対応が取り出たされているが、実際に刮目せねばならないのはそうのような工夫も実施もできないギリギリで運営している末端の職場だと私は思う。


 日本政府が本気で社員の自宅勤務を推奨するならば、まず事実上休業することが出来ない職種や休業により廃業に追い込まれる零細企業のバックアップを熟考すべきではないだろうか。

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