じ、じいやに教わったの!
プレアは部屋に監禁されたあとすぐに行動を開始した。四畳くらいの狭いスペース。窓はなし。通気口らしきものも見当たらない。扉には取っ手がなく内側から開けない仕組みになっている。
何事もなかったように手錠を外して、扉に密着して手を当ててみた。
「カードキーの差込口はたしかこの辺りだった」
触診でその場所を探り当て、透視能力とマイクロ波を使って電子回路がどのような構造になっているかを調べた。
「うん、この程度なら制御室に検知される前にかたをつけられる」
プレアは、そのまま電波を使って電子ロックを解除した。扉が開くのと同時に通路に躍り出て、見張り兵士の頭上を飛び越えながら睡眠電波を飛ばした。気を失い床に崩れ落ちた兵士の胸ポケットから、何枚かのカードキーと手錠の鍵を手にいれた。
「出て、こっち!」
守田はいきなり開いたドアからプレアが現れたことに驚くが、言われるがままに外に出た。床に倒れた兵士を恐る恐る跨ぎ、すでに開いている須賀理の部屋に入った。
「でかしたぞプレ子捜査官! どこかの間抜けな誰かさんとは大違いの働きっぷりだ。やはりボクの優秀な人材を見抜く目に狂いはなかったようだ」
須賀理がプレアの両肩に手をのせ、褒め称えているところだった。守田がわざとらしく扉をノックする。
「アン、誰が間抜けだって? それにこいつは俺が連れて来たんだ、もっと俺に感謝しな」
須賀理があからさまにバレたという顔して咳払う。
「とにかく本採用まであと一歩だ、栄えあるXファイル部に希望と言う名の爽風を吹き込み、盛り上げ役の一端を担ってくれることを期待してるよプレ子くん!」
プレアが須賀理に褒められたことに舞い上がる。
「はい、期待しててください教官殿! これまで以上に頑張ってみせます!」
「でた、派遣煽てて正社と同じ仕事をさせるブラック企業の常套句。プレア、お前死ぬまでこいつにこき使われる気か? それだけはゼッテーやめとけよ……と、そりゃそうとお前、どうやってこの扉から抜け出したンだよ?」
守田の問いかけにプレアはギクッと背筋を伸ばし、途端、しな垂れるように下を向いた。足元のローファーを見つめながら必死で言い訳を考える。
「そ、それは……」
「鍵穴とかはなかったぜ? ひらけゴマで開かねぇのはこの俺で証明済みだ」
「ぶわははっ、それガチで言ってんの、超ウケる。その呪文で扉が開くと思う人類はこの世にいませんから」
「うるせー! 何にもしねぇよりマシだろが!」
「じ、じいやに教わったの! 最近の家は電子ロック式だから鍵がなくても開けられる方法を習った。何度も練習したから……」
銀河警察特殊諜報員教育課程の検定試験に一発合格したことは口が裂けても言えない。
「じゃあアッチで眠りこけてる兵士はどう説明する?」
「そ、それもじいやに教わったの……暴漢には有無を言わさず風を切り裂くような正拳突き。何度も練習した!」
「正拳突きで気絶するなんて聞いたこともねぇぞ」
「はいはい、これから本格的に宇宙人探ししようって時にそんなことどうだっていいじゃん。ねぇプレ子」
「お前全っ然懲りてねーな。あーもう面倒見切れねぇ、ET探しは終いだ、こんなとことっととおさらばすっぞ」
プレアが脱出を促そうと彼らに声をかけようとしたところ再びあの警報が鳴りはじめた。館内ということもあってか外よりもけたたましく聞こえる。
「ほーら、モルダーがブー垂れるからこうなった。責任とってよね!」
「つかやべぇぞ、今度は弁解待たずに殺されちまう。と、とりあえず俺も手錠を外してくれ」
プレアは守田の手錠を外し、扉際に立って外の様子を伺った。まだ誰も駆けつけて来ていないようだ。
「今ならまだ逃げきれる。ついてきて」
プレアは逃げる方向を指で示し、先導するように部屋を出て右に曲がった。発破をかけたれたふたりは、慌ててその後を追いかける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます