第二章 明かされた脅威
今から、あの船に乗ってた宇宙人に凸りに行きまーす
午後4時10分
次の日の放課後 Xファイル部部室内
「さて、お待ちかねの部活の時間がやってきました。さっそく昨日の事件について大いに検証してみよう! てその前に……なんで陰キャプレ子がここにいんの!」
「は? なんでって別にいーじゃねぇか、もう赤の他人じゃねンだからよ」
守田が、部室の前で行ったり来たりしているプレアを見かねて強引に連れてきたのである。
「そんなことボクの知ったことじゃない。部員じゃないのに勝手に連れてくるなって言ってんだし! 秘密が漏れたらどうすんのさ」
プレアが意見を対立させる二人を交互に見て困り果てている。
「こいつが機転利かせたお陰で助かったのをもう忘れちまったのか? え、端倪すべからざる自称天才の部長さんよ? テメェのままごとにどっぷりと浸からせておきながら今さら知らん顔はねぇだろ」
「い、イヤミか貴様ッッ! 崇高なる活動をままごと呼ばわりをせめて訂正しろ!」
「とにかく、いち部員としての俺の意見を蔑ろにすンなら、この先とてもじゃねえがお前のお遊びについていくのはゴメンだ。もうお前だけの部活じゃねンだぞ、さあ、どうする部長?」
須賀理が反論の根を絶たれたような渋い表情でようやく決断する。
「ムククッ……このボクが昨日入った三下部員に言いくるめられるなんて……クッ、ハイハイおかのした。じゃあ億歩譲って仮入部。部員にそぐわないと思った時点で即刻退部が条件!」
「だとよプレア。つーことで改めてヨロシクな」
守田がそう言ってプレアに友好の証として手を差し伸べるが、プレアは守田ではなく須賀理の方をじっと見つめながら、短くお礼の言葉を述べる。
「ありがとう」
「って俺にじゃねえのかよ!」
ともあれ、二人は近くに立てかけてあったパイプ椅子を持ってきて須賀理の机の前に座った。須賀理が自前のラップトップに火を入れ、昨日撮ったデジカメ画像を彼らに見せながら雄弁に述べ立てる。
「昨日我々が目撃したのは紛れもなくエイリアンクラフトだと断言できる代物だった。Xファイル部創立以来初めての第一種接近遭遇に歓喜し、証拠となるサンプルも手に入れ、第一の目的を無事果たし感涙を流した我々であるが、残念なことに元来の目的、すなわち、第五種接近遭遇を果たせていない限り、いまだ夢半ばといった状況なのである!」
「お、プレアお前いつの間にか撮られてンぞ」
「――ッ! だめ、すぐに消して」
守田に隠し取られたことを指摘されてプレアがとても恥ずかしがっている。プレアはそれを見て青褪めるが、なぜそうなったのかは察していただけるとありがたい。須賀理は、演説に耳を傾けない彼らを気にも留めず、昨夜手に入れた虹色の光を微かに放つ銀色の物体を入れた小瓶を指で弾いて取り、彼らに次の内容を言い渡す。
「そこで賢いボクは閃いたのです。手に入れたいモノがあれば直接掴みに行けばいいのだと。よって、我々の次なる調査目標が決定しました。第三種接近遭遇の実現。すなわち、今から、あの船に乗ってた宇宙人に凸りに行きまーす」
聞き捨てならない内容に、二人はようやくラップトップから目を離した。
「今からって、どこにいンだよそんなの」
「フッ、これだから素人は困る。昨日見たのをもうお忘れかね。軍隊が出動したんだよ? つまり、ボクの見立ては時坂駐屯地。なんたって、あんなに早い対応はこの市の軍にしか出来ない芸当だからね」
須賀理がラップトップを操作し、隊員が着用している野戦服の胸の部分を拡大表示させる。
「ホラ見て、第三七普通科連隊の部隊章。つまり、時坂駐屯地内に隔離されてる可能性が高いことを示してる。フフン、やっぱりボクって天才」
守田は、須賀理の抜け目のなさに呆れた溜息をつき、こう尋ねる。
「一応聞くけど、会ってどうするつもりだ?」
「まずこの物体が何で出来ているのかを聞くつもり。万が一助けることができたら宇宙船の作り方だって教えてくれるかも。知らんけど」
「ンな事のためにまた命張れってのかよ! 昨日の今日だぞ? プレア、お前も何か言ってやれよ」
「侵入の手口はどうするの?」
守田が背中をのけぞらせてパイプ椅子からずっこける。
「あぁはいはい、お前もバカだってことを忘れてたよ。クソッ、また自殺志願者のお守りかよ、なんであんな約束しちまったんだ俺は……」
プレアは至って真剣だった。彼女は、多少なりとも危険が生じることを覚悟しつつ、須賀理と行動をともにしながら任務を達成しようと考えたのだ。
「それが意外にも簡単に侵入できそうなんだよね」
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