第2話

 「ぎゃあ~」

さっき出していた声とは全く違う声、もう完全に男になった。

「どうだ、参ったか!お前を懲らしめる為に、この間の北への大遠征の時からとっておいたんだぞ!」

何を誇っているんだ。あんたは。

全く、冷たいったらありゃしない。

もう、乙女の肌に冷たいものは困っちゃうわぁ。

「私がこんなことをされて、黙っていると思っているんですかぁ?」

私の顔はきっと、極東のジパングの仮面のようになっていたことであろう。

あれは、大層恐ろしい顔をしていたものだな。

「と、言いますと...?」

部隊長は、錆びた鎧のような動きをして、こちらを見ようとする。

だがなぁ!

「お前も、私と同じ苦しみを味わえぇ!」

そう叫び、私は投げつけられて落ちていた雹を拾う。

そして、騎士隊に入隊したての頃からやっているスポーツをやる要領で、腕にしなりをつけ振り抜く。

この際、私は周りに部隊長以外の者がいることに気付いていなかった。

それはさておき。

「わ、お前ッ、何を...痛ッ...冷たッ!」

部隊長は、自分の棒が揺れるのも気にせず、私から逃れるように、猛烈な後ずさりをする。

わぁ、可愛い//


あれ、なんだか棒が大きくなってきてる...?

きゃ~//

私は、「心底驚いた」という感じの事を言う。

「ま、まさか本当に勃っていたなんて...そんなに興奮しないでくださいよぉ。」

「これは...あ、あのだな...事故だ!そう、事故だ!」

部隊長は、私を指さすと

「お前がそんな大きい‘‘おっぱい‘‘を揺らしてればしょうがないことだってば!」

「ま、まさかずーーーっと見てたんですか?」

それなら、と私は息を吸い込み、

「これでもくらえー!」

と、特大の雹を投げつけるのであった。


「お前の‘‘おっぱい‘‘見て耐えられる気はしないさ...」

ぼそり、と部隊長が放ったその一言が私の頬を紅に染めた。

なんで...好きじゃないのに...好きじゃ...


 最後の方は、最早私の恥ずかしい話になっていたが...まぁ、こんなことがあり。

無事、どちらも風邪をひきましたとさ。

アホすぎ。


 私は、まだまだ任務期間があるのでこんなことでへばる訳にはいかない。

...部隊長なんて知らないもん。


 私は、ゲンナイの背中をそっと撫で、「お前は体調崩すなよ」

と、そっと言ってやる。

ゲンナイは、「はいはい」という代わりに1回頷き、それから力強く羽ばたいた。


 部隊長...時折無性に会いたくなってしまう。

なんでだろう。

まさか、好きなのかも...

そう考えた途端、顔が赤くなってしまう。

誰のせいでもないというのに、思わずゲンナイの背中をポカリと殴ってしまう。

ゲンナイは「痛いなぁ。なにするんだよう」

と、ばかりに背中のうろこを立てたり戻したり。

「あぁん//やめてぇゲンナイ//そんなえっちな子だったなんてぇ」

だってねぇ、お尻の所のうろこを動かすんだもん。

酒場にいる、変態オヤジにちょっと似てる...?

ゲンナイは、「もう、こんな女しらん」

とばかりに、急に飛行速度を上げた。

私は、顔だけ熱く他は冷たいという、不思議なことになってしまったのであった。


 ゲンナイを少し怒らせてから1時間ぐらい。

前方に黒い森が見えてきた。

「ゲンナイ、進むのをやめて。まっすぐ上昇して」

さっきあんな事をしてきた乗り手の言葉も聞いてくれる。

ゲンナイはいい子。

部隊長と違って...



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