第21話 破邪ノ英雄、ギルドで依頼を
退出した俺とリサは、リサを先頭にしてギルドへと戻った。
その後は、依頼内容を聞き、幾つかの質問をして帰宅した。
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依頼内容 第二王女の快復
依頼者 第三王女レイナ
報酬 結果次第
備考 病に伏している第二王女の完治。または将来の保障。
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これが、最終的な依頼となっている。
第三王女と第二王女は、両方ともかなりの支持を得ており、信頼も厚いそうだ。
何よりも、その美貌と優しさが特徴的らしい。
「さて。では、今から行く」
「え?い、今からですか?」
「ああ」
_何故そんな顔をするんだ?
目前で、驚愕と呆れの混じった瞳で聞いてきたリサにそう答え、俺はギルドを出た。
いや、出ようとした。
「おい、チビ。新入りがリサさんと気軽に喋ってんじゃねぇよ」
ギルドの扉の目前で、俺は3人ほどの男に囲まれていた。
倒せない相手では無いが、ギルド内で攻撃するのを許可されているのかが分からない。
「聞いてんのかぁ!?」
「…?ん?ああ、すまない。まったく聞いて無かった」
そう答えると、男達は激怒に染まった瞳で俺を見始めた。
_何が駄目だったんだろうか?
そう考えるも、何か悪いことをした記憶は無い。
しいていうなら、話を聞き逃したことくらいだろうか。
「争いは苦手なんでね。通してくれないか?」
「ハッ!!通す訳ねぇだろうが。お前には、俺達が冒険者の残酷さを教えてやる、よッ!!」
そう告げながら殴りかかってきたので、肩をずらして回避する。
勢い余った男は、そのまま床へと倒れていった。
ハッキリ言って、弱い。
「このッ!!」
「テメェ!!」
残りの2人は、その現場を見て逃げるどころか、攻撃してきた。
知能まで悪くなってしまったのだろうか。
「はぁ。期待外れだな。いや、最初から期待はしていないか」
「何を言ってるッ!!」
「そうだな。貴様等に、最強の力の一部を見せてやる」
「良いから死ねやッ!!」
さて、では、遊戯を始めるか。
「『思い知らせ!!_【蒼ノ龍】』」
その一言より生まれるは、蒼き神話の龍。
絶大で、強力な水を操り、蒼き炎を纏う龍だ。
突如現れた龍を見て、男達だけでは無く、ギルド内全ての人が怯えた。
「ば、化け物…………」
誰かが、そう呟いたのが聞こえた。
_そうか。この時代では、この程度で化け物なのか。
この龍は、以前ではそこまで強くは無い分類であった。
それが、この時代ではもう過剰である。
「さぁ。俺を殺すんだろ?教育してくれるんだろ?やってみろよ」
「ヒィッ!!!」
返って来たのは、情けない声だけであった。
男達を見ると、既に失神している。汚いだけだ。
それを見て、俺は龍を戻し、今度こそギルドを出た。
ギルドを出た俺が向かうのは、王都だ。
この街は、王都から最も近い街であり、王都ではない。
この街の中から離れた場所に小さく王城が見えることから、その近さが良く分かる。
_歩いて2分くらいか?
勿論、俺の速度で、だが。
_さて。出発するか。
街の門を通過した先は、簡単に舗装された道と平原が広がっていた。
街を囲っていた壁によって気付かなかったが、この周辺は平地が多いようだ。
公爵家の屋敷は平地の中で目立つように丘の上に建てたのかもしれない。
◆◇◆◇◆◇◆
_…そうだな。少しだけ、修行するか。
歩きながらふと、そう思った俺は、早速実行することにした。
街から充分に離れた距離まで来たことを確認してから、右手を空中に広げる。
_遥か昔。魔法という強大な力に対抗するために生まれた剣技という能力。人々はこの力を崇め、そして習得していった。
後に、最強の剣技を修めた者を。最強の魔法を修めた者を、始祖と呼ばれている。
その者には、黒き呪いが描かれ、千の魔を操り、億の舞を見せた。
「【神剣グラム】【破邪ノ
巨大な魔法陣が右手の前に描かれ、光輝いた。
そこから現れるは一振りの剣。
白銀に輝く刀身に、黄金の柄をした神の剣。
さらに、身体全体に蒼い妖気が纏われていく。
次第に、身体のいたる場所へと黒き刻印が刻まれていき、腕から手の甲にかけて伸びていく。
胴体にも、刻印が刻まれているだろう。
額には龍の紋章が青黒く刻まれ、淡い金色に輝く。
_伝説と呼ばれしその存在は、しかし突然と世界から姿を消した。
剣を右手に握り、肩近くに構える。その近くへ、左手を軽く添えておく。
その状態で神経を統一していくと、次第に身体から蒼い妖気が可視化されていく。
_伝説が消えたなら。成せば良い。伝説に。神話の存在に。そうすることが、自身の証明に繋がるはずだ。此処に、生きていると。
空気を、粒子を、魔力を、時を、水を、火を、闇を、光を、風を、空間を。
全てを切り裂き、真実へと至る道を創りあげる。
「15階級神技・居合<斬>」
世界を、大陸を、切り裂け。全てを取り残し、その先へと光となりて突き進め。
音すら無い。
剣が振られた動作すら、たった1ミリですら動かした様には見えない。
しかし、事実として、既に剣は振られた。
ピキッ、…パリンッ!!
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