第20話 破邪ノ英雄、休日を満喫する?(2)


 さて、此処で問題がある。

 ギルドカードというのは、対象の人物の戦闘能力を自動で割り出し、ランクを判定するという、平等性を考えた設計をされている。

 既に気付いた者もいるかもしれないが、俺の場合はどうなるのだろうか。


 結果が、コレだ。


 ___

 Rank SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS+


 戦闘力 error


 最高討伐記録

 ___



 渡されたギルドカードは、虹色をしたカードとなっており、そのまま消えていった。

 どうやら、出そうと考えた時だけ空中に表示されるらしい。

 劣化した時代なのに、この分野だけは以前よりも時代と同等の進化をしているようだ。


 と、現実逃避も止めておこう。


「なぁ兄ちゃん。俺達とパーティー組もうぜ?」


「馬鹿野郎!俺と組むよな?」


「ねぇねぇ?私達と組まない?」


 勧誘がしつこい。

 どんなに断っても、気持ち悪いくらいの笑みで勧誘してくる。

 こんなことになるなら、ギルドの方も少しは配慮してくれても良いと思うのだが。


 ただ、俺が歴史上で始めての強さを出した、という認識しかないらしく、誰も俺の正体には気付いていないようだった。


 _それだけは行幸だな。


 そうこうしているウチにやっと先ほどの女性が奥かたやってきた。

 ギルドカードの作成に無駄に時間を掛けた上に、今まで何処に行っていたんだ、と問い詰めたいが、今は無理だろう。


 なにやら、女性の方も困ったような表情で俺に近づいてきた。


 _とりあえず、会話の前に1つ、だな。


「すいません。ギル「お前の名前は何だ?呼び辛い」え?………リサ、です」


「そうか。ではリサ。話を続けてくれ」


「わ、分かりました」


 突然話を遮ったからか、困惑したような表情をしていたが、すぐに気を取り直して喋りだした。


「ギルドマスターが、御呼びです」


「ん?分かった。じゃあ、案内を頼む」


「はい」


「کلاس های تربیت بدنی__【透明インビジル】」


 そう唱えると、俺とリサに光の粒子が纏われ、その姿を外界から隠した。

 俺とリサは普通に見えるが、周りからは急に消えたように見えるだろう。

 その状態で、俺はリサの後ろを歩いて行った。


 ギルドマスターという人物の場所までは、意外にも近かった。

 受付の横にある、上へと続く階段を上り、右手に曲がった先にある部屋だ。


 リサが先に扉をノックした。


「失礼します。レイ様をお連れしました」


「どうぞ」


 返って来たのは、驚くことに女性の声であった。

 返事を受けたリサは、一礼しながら扉を開き、その中へと入って行った。

 俺も、その後ろに続いて中に入った。


「ようこそ。公爵領ギルドマスターのリンカです」


「?…無所属のレイだ」


 そう答えると、リンカという女性は面白そうに微笑んだ。


 _苦手なタイプだな


 特徴的な紅い髪をしているリンカだが、瞳の色は黒かった。

 この世界で、黒い瞳をした人物を、俺は2人しか知らない。


「何の用だ?」


「そう急かさずとも話しますよ?用件はただ1つ。貴方に、個人依頼を受理して頂きたい」


「いいぞ?」


「え……?…………わ、分かりました。ありがとう御座います。では、1階の受付で受理してから、始めてください。内容も、その時に聞けば良いはずです」


 即答でOKを出した俺に、リンカは一瞬呆けたように固まったが、それでもマスターなのだろう。

 すぐに気を取り直して、話し始めた。


 _それにしても、このが発動するのは珍しいな


「………………?ああ、それでは、退出するとしよう」


「ええ。


 _やはり、この女性は苦手かもしれない。




 ◆◇◆◇◆



 ※三人称視点


 夜空に輝く月が、その光を窓から差し込む。

 部屋の中にいる女性は、ベッドに横たわる女性を見て、涙を流していた。


「フィーリアッ!!……お願いです。勇者様。誰かッ!!」


「うッ…あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


 横たわる女性が、突然狂ったように声をあげる。

 しかし、既に見守る女性には慣れた現象だ。

 だからといって、心は多大に苦しむが。


 大切な存在が。愛しい存在が。ただただ朽ちて往く様を見ることしか出来ないほど、苦しいものは無い。



 _だが、この日は違う。


 __これからは違う。


 ___世界で、最も、最強の名を冠する者がこの場へ向かう。


 ____そこから巻き起こるのは、感動か暴走か。


 _____学園まで1ヶ月の間に起こる、事件の始まりだった。

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