第3話 歴史の起点~運命は此処から始まる~

 歴史上において、唯その強さだけを記された破邪ノ英雄。その存在は、人生において、「三度」の間違いを犯した。

 そして、この破邪ノ英雄という歴史においても、ある決定的な間違いを犯したのだった。





 ◆◇◆◇◆




「なッ!?『反射』!!」


 古い遺跡の中、破邪ノ英雄と呼ばれた存在は、黒い霧に包まれていた。

 魔法やの効果を跳ね返す魔法を使用したが、まったくの無意味と化した。

 霧は段々と身体の形を象り、その大きさを縮小させていく。


 驚くべきは、その霧によって破邪ノ英雄も縮小していっている事だ。

 403歳だった破邪ノ英雄の身体は、32歳の頃から変化が無い。

 それが、若く戻るということは、つまり破邪ノ英雄の魔法よりも威力の高い呪いか魔法ということだ。


 _恐らく、魔法であろうな。


 そう考える破邪ノ英雄は、その姿が幼くなっていくのを見て、ただ無表情に立っていた。


 _もし、幼い身体になるとしたら、幾つになるのだろうか。


 そんな疑問を考えられるのは、単にこの状況が自身に害を成さないと理解しているからだろう。




 ◆◇◆◇◆




 ふむ。霧が収まったのを確認した俺は、その身体を動かしてみた。

 腕は筋肉が減少し、視界が低くなっていることから背も縮んだのだろう。


「12歳頃の身体か..................」


 そう呟き、俺は自身を鑑定した。これは、俺が長い研究において発見した、技能スキルと呼ぶものだ。

 鑑定において調べることが出来る項目は、名称、技能、LV、種族、この四つだけだ。しかし、それだけでもかなり有用である。



 名称 破邪ノ英雄

 種族 ハイ・ヒューマン


 LV 3079


 技能  鑑定lv10

     神眼lv10

    神剣術lv10

     疾駆lv10

    無魔法lv10

   魔力操作lv10

    魔力剣lv10

   身体強化lv10

  全属性耐性lv10

   苦痛耐性lv10

 精神苦痛耐性lv10

     連撃lv10

  設定外技能lv10

     収納lv10



 感覚で分かってはいたが、やはり能力は何一つとして退化していないようだ。

 この外見でこの強さなら、世界で一位も簡単に取れるのではないだろうか。興味はあるが、今は此処から出ることに集中か。


 今俺がいるこの場所は、「次元の迷宮」という遺跡だ。此処は、侵入してから一秒経つ毎に1日が経過する場所だ。既に長い時間いることから世界はかなり変化しているだろう。

 腐った世界の戦争に終止符を打ったのは俺だが、その後どうなったのかは知らない。


 もしかしたら、人類は全滅しているかもしれないな。

 そんな事を考えながら歩いていると、遺跡の奥から光が見えた。此処が、迷宮の出入り口だ。

 その光に浮かされるように速度を上げて、出口から出る_________瞬間だった。


「ッ!」


 突如後方から直線の光線が飛来し、それを身体を捻ることで回避した。

 すぐさま振り返ると、先ほどまでは誰もいなかったその場所に、黒いマントを羽織った骨が立っていた。その手に集まる魔力を視認した途端、俺は無意識に移動していた。


 横に跳躍した俺の隣を、電気を纏った光線が駆け抜けて行く。


「チッ!!!『デュランダル』!!!」


 舌打ちと同時に、右手を空中に突き出し、その起句を唱え。

 右手の中に光の粒子が収縮し、その形を変形させていく。金を基調とし、赤の装飾が成された剣は、神々しい輝きを放ちながら水色の光に包まれた。


 _2階級突撃技<ストレート>


 剣技の補正により、動きが加速し、骨の心臓部に存在する魔石に向かって飛来する。

 この骨のような存在を魔物と呼び、最も効果的なダメージが、核となる魔石への攻撃だ。


「ハァッ!!」


 気合の入った声とともに、剣先が魔石へと触れ、貫通した。

 赤い魔石の輝きが失せ、骨の身体は一瞬で崩れ落ちた。この魔物は、確か10に分けられた階級で上位に位置する3に存在する、リッチだったはずだ。

 そんな知識を呼び起こしながら、俺は魔石を拾い、今度こそ出口から出た。


 眩しい位の光に包まれ、突風が身体を吹き飛ばそうとする。

 視界が回復すると、其処は懐かしい俺の本拠地、天空城スカイ・キャッスルだ。

 雲の上を自由に飛行し、物理、魔法の両攻撃を完璧に”反射”する優れた結界が張られている。


 広大な浮遊島の上に築かれた城は、俺と配下のが住んでいる。

 もう1人、俺と同じく上位人間、ハイ・ヒューマンだった親友も住んでいるのだが、今は何故か反応が無い。恐らく、下界に行っているのだろう。


 そこで、俺は目を見開いた。


「龍の強さが、半減している?」


 気配察知に存在する全ての龍の反応の強さが、半減しているのだ。

 しかし、その状態は健康そのものである。


(ネピア!!この状況はどうなっている!?)


 龍達を束ねる長である、龍皇のネピアへと念話を繋ぐと、重苦しい言葉が帰って来た。


(主が迷宮に潜ってから、この世界は眩い光に包まれました。その光が収まった時、の強さ、生命力がほとんど失われました。我々は主の加護によって半減で済みましたが、人間種は以前の1%程度の力しか保有していません。主の親友であった彼も、半減しましたが、人間種にとっては神に等しき力。下界に降り、勇者として活動しております)


 その報告を聞いた俺は、下界を見つめて、アイツに礼を伝え、城に向けて走った。

 恐らくこのままだと、

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