吸血鬼を殺した僕の物語

神崎 ひなた

第一章 吸血鬼との邂逅

① 高坂 燈火との邂逅

 高坂こうさか 燈火とうかに対する僕の第一印象は、「死んでるな」という一言に尽きる――いや、腹に風穴を開けて血だらけで倒れている少女を見たら、誰だってそう思うだろう。

 どんな個性も死んでしまえばただの飾りで、鮮やかな流血、その色と比べたら霞んでしまう。


 人通りの少ない、路地裏。


 気が付いたときには既に、高坂 燈火(その時は名前すら知らないただの少女だった)は動かなくなっていた。

 土砂降りの中、彼女の胴体から湧き出る綺麗な川が、側溝に向かって流れていた。白いセーラー服を着ていたせいで、嫌でも赤が目立った。彼女の表情は驚きに満ちており、その周辺だけ時間を切り取ったようだった。


 僕はその光景を、ぼんやりと眺めた。

 綺麗な女の子だった。長いまつ毛に、透き通るような黒い髪。白くて柔らかそうな肌。きっとお淑やかで、凛とした少女だったのだろう。

 ――死んでしまっているけれど。


 彼女はどんな風に笑い、どんな家族を持ち、どんな友達と過ごし、どんな夢を抱いていたのだろう。

 ――そんな想像も、もう無駄だけど。


 人を殺す奴ってのは、一体何を考えて生きているんだろう。何が楽しくてこんなことをするのだろう。僕には全く理解できない。


 雨の中、僕は傘もささずに立っていた。雨の冷たさは気にならなかった。

 


……。」

 震える唇で、他人事のように呟いた。現実感などまるでない。

 それどころか――前後の記憶すら曖昧だ。


「どうして……一体どうして、こんなことに……」


 その問いに応える声はない。 

 咎めるように、ただ雨は降る。


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