第16話
「追加アイテムは、その週に新しくゲームを始めたプレイヤーに、プレゼントされることがあるらしい。もちろん、全員じゃなくて数人単位だろうけど。もう一回ゲームを初めて、もらえるのを待つとかな」
「マリオネットとかは、もう追加されちゃってるからだめなんじゃないの」
「……そうだな。やっぱり、
「人手を増やすってこと?」
タカはそれに無言でうなずく。確かに、大人数のほうが早いだろう。一万ヴァースドルを百人から集めれば、百万なんてあっという間だ。百人も知り合いがいて、快く出してもらえればの話だが。
「人手か……」
また僕らの間に、
すると、後ろから声を掛けられた。
「おっす!キョウちゃん」
振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。
「なんだ、アキラか」
その少年は、
アキラは生粋の
「いつ、眼鏡外すの?」
「寝るときしか外さないよ」
「風呂の時は?」
「したままだよ」
僕らはその答えに、
アキラはかなり後ろから僕らを見かけて、走ってきたらしい。息を切らしていた。ということは、僕らは周回遅れかもしれない。そろそろ、真面目にマラソンした方がいいだろうか。
「なんだはないでしょ、なんだは!」
言いながら、アキラは僕の肩を叩く。アキラと、今の僕のテンションにはかなりのひらきがあった。
思い切り肩を叩かれた
「アキラ、最近ゲームやってる?」
僕の問いかけに、全てを察したタカもアキラの顔をのぞき込む。
「やってるよ!ビースト・オブ・ザ・ゴッドってゲーム」
僕とタカに、笑顔の花が咲いた。
「レベルは?チーム組んでる?」
タカが、矢継ぎ早に質問をする。アキラは僕らの
「レベルは四十六だよ。タロウと一緒にミッドナイトってチームに入ってるよ」
タロウというのは、アキラの親友だ。
「……そっか、入ってるのか」
今度は
「実はさ……」
僕はダメ元で、これまでの
「そういうことか。じゃあ、俺をドラゴンバスターに入れてよ。タロウも
「えっ、大丈夫なの?」
「うん、キョウちゃんたちとやった方が楽しそうだし」
僕はタカと顔を見合わせた。そして、抱き合って喜んだのだ。それに、なぜかアキラも加わる。そして、三人で輪になって、その場で回転を始めた。
「お前ら、男同士で抱き合って
突然、後ろから声がした。振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
「バングラ先生……」
その男は、体育教師だった。誰が言い出したのか知らないが、バングラ先生と呼ばれていた。バングラディッシュ人っぽいというのがあだなの理由らしい。近所のお兄さん的な印象で、生徒からの人気は
「ふざけるのは、終わり終わり。もうすぐ授業終わるから、校門まで真面目に走って!」
「はーい」
僕らは声を合わせてそう答えると、輪を崩したのだった。
体育の授業が終わり、教室へ戻る。僕とタカ、アキラは一緒に教室へと戻っていた。
「そういえばさ、
アキラは言いながら、前方を指差した。僕らの少し前を、少年二人が歩いている。その二人は、
「ナリミンと中野か」
「……一応、声を掛けてみるか」
成宮のあだ名は、ナリミンだ。実は、ナリミンの家は僕の前にある。いわゆる幼なじみってやつだ。僕とナリミンは、去年も同じクラスだった。
ナリミンの弱点は乗り物だ。異常なぐらい、乗り物に酔いやすい。僕は、あれほど乗り物酔いする人間を見たことがない。去年の遠足で、僕らの座席は隣同士になった。バスが学校を発車して、わずか十分。ナリミンは、僕の隣でもどしていた。
遠足では乗り物酔いしたときのために、各自エチケット袋を持っている。エチケット袋は、ビニール袋の上に紙袋をかぶせたものだ。自分のもどしたものを他人が見て、もらってしまわないようにというのがエチケットらしい。
ナリミンは出発わずか十分でもどし始め、自分のも僕のエチケット袋も使い果たした。そして、透明なビニール袋にももどした。
僕はそれを見て、
「大丈夫、赤いのって血じゃないの?」
「ううん、今朝すもも食べてきたから」
乗り物弱いのに、遠足の朝にすももって……。そして、あまりのもどしっぷりに、先生はナリミンを一番前の先生の隣の席へと呼びよせた。そのおかけで、僕は
一方、中野には特にあだ名はなかった。みな
中野は学級委員だからだろうか、やけに顔が広かった。同じ学年だけでなく、上級生と下級生にもそうとうな数の知り合いがいた。確か、生徒会長とも知り合いだった。おそらく次の生徒会長を狙っているのかもしれない。
その休み時間は、着替えるので精一杯だった。体育の授業は、体操着に着替えなくてはいけないのが
その次の休み時間に、僕らはナリミンと中野に話を切り出した。
ナリミンと中野は、二人でチームを組んでいたらしい。ちょうど、二人もチームを大きくしたいと考えていたようだ。二つ返事で、仲間になることを
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