第二部「空からキジが飛んできて」
道中、
うん、美味しい! 流石はおばあさんだ!
おばあさんのきびだんごに舌鼓を打っていると、空から緑色のきれいな羽を広げて一羽のキジが飛んできました。
「美味しそうなきびだんごね! 良かったらそのきびだんご、私に一つくれないかしら?」
「良いですよ、キジさん。……はいどうぞ」
「ありがとう♪」
翔平は巾着に入っていたきびだんごを一つ、キジに差し出すと、キジは美味しそうにきびだんごを食べました。
「ごちそう様でした! とっても美味しいきびだんごをありがとう!」
「いえいえ、喜んでもらえて何よりです」
「何かお礼しないとね」
「お礼なんてそんな……」
そうだ! きびだんごのお礼というわけではないけれど、キジにも鬼退治の旅に同行してもらおう! キジの機動力があれば偵察係に申し分ないし、鋭いクチバシは高い攻撃力も備えているはずだ!
翔平はそう思い、キジに提案しようとしますが、先にキジが口を開きます。
「そうだ! きびだんごのお礼に、私が君のお姉ちゃんになってあげるわ!」
「…………はい!?」
……聞き違い……かな? 今、お姉ちゃんって言ったのかな? 家来じゃなくて?
「あれ? 聞こえていなかった? 君、私の弟になって!」
「いやいやいやいや! 聞こえていましたから! 別にお姉ちゃんとかはいらないですから!」
「そんな! 私、お姉ちゃんに憧れていたのに! 桃太郎さんはお姉ちゃんはいらないって言うの!?」
「それよりも鬼退治に付き合ってくださいよ! 付き合ってくれるなら、一回だけ姉扱いしてあげますから」
「う~ん……。分かったわ! それじゃあ、きびだんごのお礼に私も鬼退治手伝うよ! だから一回! ね?」
「それなら承知しました。それじゃあ……」
正直、キジに対してお姉ちゃんだなんて、おかしい話ではあったが、翔平は鬼退治を引き受けてくれたキジにお礼の気持ちを込め、その言葉を発した。
「ありがとうございます、『お姉ちゃん』」
「…………」
そう言った途端、飛んでいた体をプルプルと震わせ始めたキジ。何事かと思った翔平は、キジの前に顔を近づけ、再度呼びかける。
「お姉ちゃん?」
「キャーーーーーーーーーーー!!!!!♡」
突然ピンクの悲鳴を甲高く叫び羽をバッサバッサと振りまくるキジ。頭から生えた一本の体毛が高速回転し、ピンッ! と垂直に立ち上がる。
「ゲハッ!!!」
キジはやがて口から大量の血を吐き出し、地面に落ちた。
「ちょっ! キジさん!?」
「弟……可愛すぎぃぃ……」
目をハートにした状態でピクピクと羽を震わせる緑色のキジ。桃太郎はそれに若干引きながらもキジの体を両手で覆って持ち上げる。
「大丈夫ですか!? めっちゃ血が出てますけど!」
「ダイジョウブダイジョウブ。大丈夫だからもう一度『お姉ちゃん』って呼んでもらっていい?」
「呼ばないですよ! そのせいで死にかけているんですよ!?」
「えーーーーー!? 呼んでよーーーー!!! 私、お姉ちゃんでしょ!!」
「キジですよね!? もっと言うと僕の家来ですよね!?」
「ハァーーー!! 桃太郎さんの顔、小さくて幼くて可愛ぃぃぃ!! 私のクチバシでツンツンしたい。ハァハァ」
「何でそんなに息荒くしてるんですか! 気持ち悪いですよ!」
とてもその美しい姿からは想像できない奇行に桃太郎は絶えずツッコミ続ける。
種族と立場を完全に無視した自称「姉」。姉とは一体なんだろうか?
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