ネバーエンディング長門有希
ハルヒが成層圏で消失して、俺たちの高校から赤い流れ星が見えた年に、古泉はトランプマジックの世界大会に出る、と言ってアメリカに渡っていった。季節は秋で、この年の紅葉は一際赤く、例年よりも長く続いたことを覚えている。
と言う訳で今は季節は秋で、最も、今年26回目の秋なのだが、秋というのは比較的過ごしやすいし、毎年いつの間にか終わっている季節なので、秋を何度も楽しめるというのは悪いことではないな…とは思いつつも、秋の行楽というものはよく考えたらあまり思いつかず、朝比奈さんは今年26回目の食欲の秋を迎え、着々と体重を増やしてこれからやってくるであろう冬眠の季節に備えていた。
長門は朝比奈さんが冬眠時に困らないようにせっせと冬眠のための穴を掘っているのであるが、先日その穴がドーヴァー海峡を越えてイギリスに届いたという報がもたらされ、谷口が「仰天動地だ…」と言っていた。
エンドレスな夏が終わって、秋がやってきて、最も秋に何があったかはだいたい忘れてしまうのであるが、その後冬がやってきて、俺が朝倉に刺されて、またエンドレスな夏がやってくる。26回も繰り返すといい加減手慣れたもので、俺は宿題をやってないことに極力気づかないようにすることで夏休みを極力長くするように立ち回ったり、長門は読む本をもう部屋においておけなくなったので電子書籍に移行したり、朝比奈さんに至ってはもう俺が刺されるのに慣れてしまったのか、俺が朝倉に刺されても「え?またですか…?」くらいの反応を示すようになってしまったし、朝倉に至ってはもうナイフで俺を刺すのが面倒くさくなってきたのか、先日ははんぺんで殴ってきた。
ところで聖徳太子は実在したのかしないのか、これに関しては議論のあるところである、曰く1億人の言葉を同時に聞いたであるとか7101の言語を話したであるとか、C言語が使えたであるとか、オスマン帝国をもってコンスタンティノポリスを陥落させたであるとか、フランスで第三共和制を興したであるとか、冠位十二階を制定し、広く人材を集めレコンキスタを成功させたであるとか、アレクサンドリアに大図書館を築いたであるとか、天動説を唱え、計算機を作り、電球を発明して世界を広く照らしたとか、とにかく業績には枚挙にいとまがない。聖徳太子は厩戸で生まれたというがところで日本に馬が渡ってきたのは古墳時代であるという。馬というのは大変うまく、特に馬刺しなどは大変美味である。馬を何故生で食べて良いのか、これに関しては体温が高いからであるとか、いろいろ言われているが、本当になんでなんだろう。朝比奈さんに聞いたら馬は宇宙からやってきたインベーダーで根本的に地球の生き物と違うから寄生虫がいないのだ、という話をしていた、このことは朝比奈さんの未来でも2683年に人類と馬と知性のあるトカゲの戦争が起こるまで判明していなかったらしい。朝比奈さんは蕩々とその戦争の記憶を話してくれたが、ディープインパクトの子孫にあたる馬
との友情の話に差し掛かるや、陰惨な戦場での記憶のフラッシュバックを起こし
、嘔吐しながら倒れてしまった。ところで朝比奈さんは西暦6872年の未来からやってきたと言っていたのだが、果たしてこの人は何年生きているのだろうか。
長門はイギリス土産のフィッシュ&チップスを片手に、ソシュールを読んでいた。
「ネバーエンディング長門有希」完
才智あふるる郷士ドン・キホーテ・デ・長門有希(El Ingenioso Hidalgo Don Quixote de la Nagato Yuki) johnsmith @johnsmith14
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