地獄とは長門有希の不在なり

 別府の地獄めぐりで地獄を見たハルヒが発狂し、行方不明になってからもうかれこれ一年の時が過ぎようとしていた。あれもそういえばこんな肌寒い情景の中に、時折春の芽吹きを感じるような初春ともいえないような冬のことであった。


 それはさておき長門は今日も「逆立ちをしたまま目でピーナツを噛み、鼻でスパゲッティを食べる」ことが可能かどうか、と言う命題を検証しつづけている。三歳児と言うのはなかなかに扱いづらいもので、そんなことはやめなさい、と言っても頑として聞かないものだから、これに関してはまあ仕方なかろう。「鼻でスパゲッティを食べる」に関しては長門はいとも簡単にクリアしたのであるが、長門の鼻にやたら長いスパゲッティがすすられていく姿はちょっと気持ち悪かった。長門も長門で無理をしていたらしく、八分ほど鼻からすすったのち、喉に熱いスパゲッティが直撃し、えづきながらのたうち回り、朝比奈さんが大爆笑。と言った一幕もあったのだが、朝比奈さんは後で長門に1発強烈なボディーブローを食らったらしい。

 難題はむしろ目でスパゲッティを噛む…違った、ピーナッツを噛む、と言う方で、そもそも歯がない目でピーナッツを噛むと言うのはどう言うことなのか、と言う問題の解決が現在ヨーロッパの各種研究機関での解析が待たれているところであるが、一向に解決しそうになかった。

 朝比奈さんがこっそり教えてくれたのであるが、この命題に関しては朝比奈さんがやってきた西暦5878年においても未解決で、ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題と同じく今後も解決されることはないだろう、と言うのがマザーコンピュータの見解であるらしい。

 どうやら朝比奈さんの未来では人類はマザーコンピューターに支配されているらしいと言うことがわかってきた。


「地獄とは長門有希の不在なり」完

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