第7話 長門有希い塔の男
カニカマはカニのかまぼこなのであるが、これは非常に難しい問題を内包している。カニカマはカニのかまぼこであるにも関わらず用いられているカニの成分はごくわずかなものである。ではなぜカニカマと呼ばれるのかというと不思議なことにカニの味がするからなのであるが、主成分はほとんどタラである。
タラという魚がどういう魚なのかというと、日本近海にはマダラ、スケトウダラ、コマイの三種が存在し、コマイってなんか名前がタラっぽくないな、などと思いつつ、コマイはどうやら夜行性で群れを作る習性があるということを今調べて知った。
ワニは果たしてタラと戦った場合勝てるのか、このような命題が存在するとき長門はどうしていたかというと、ウニのとげをつついては指先がちょっと痛いという感覚に不思議を感じ、ウニをつついては首を傾げ、少し強めに突こうとしてちょっと痛いのでやめたりしていた。
俺はそんな長門を眺めながら、古泉とオセロに興じていた訳である。よそ見をしながらでもゲームに弱い古泉になら楽勝であろう、と思っていたが、盤面は俺が目を離しているうちに二転三転し、古泉の白はもはやうずたかく積み上がり、空の天幕を突き破らんと今も刻々と積み上げられていた。
このままでは人生において初めて古泉に敗北を喫してしまうと思った俺は、うずたかく積み上がった白を黒で挟み、ゆうに5万枚はあるであろう白のオセロの駒をせっせと黒に裏返した。四つ角を取ったのでもはや古泉の敗北は確定したようなものだろう。初めは脚立、次にクレーン車、はしご車など、様々な手段を使って積み上げられたオセロの駒を必死にひっくり返していた俺であるが、どうやっても届かないところまで来てしまい、俺たちはオセロの駒をひっくり返すために高い高い塔を建設することになった。やがてその塔は神の怒りに触れ、俺たち人類は散り散りとなり、異なる言語によって意思疎通を阻まれることになり、後世ではその塔はバベルの塔と呼ばれたようであるが、長門は相変わらずウニをつついていたのであった。
「長門有希い塔の男」完
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