第3話 長門有希、ときどき音楽

 先日ハルヒが地球連邦政府に秘密裏に和平交渉を持ちかけに行くところを、全てを察知していたギレン・ザビに旗艦グレート・デギンと共にソーラレイで焼かれたため、今日は休日だというのに不思議探索がないという、SOS団諸氏にとっては大変珍しい日となった。

 一日オフになったといっても、特にやることもないので家で惰眠を貪っていたわけだが、妹のキャメルクラッチとなぜかいつの間にか俺の部屋にいた長門の脳天から滝割りによって強制的に目覚めさせられ、俺はどうやら妹の買い物に付き合わされることとなった。程のいい荷物持ちというやつである。長門は何も言わずについてきた。

 妹はミヨキチ(妹の同級生で、あだ名からすると多分語尾は「〜でヤンス」だったと思うのだが、どうも記憶がはっきりしない)が持っていた香り付きのキャラクター消しゴムが羨ましかったらしく、文房具屋へのお供に抜擢されたという次第である。長門は「どうしてもねり消しが5トン必要になった」と言ってねり消しを5トン購入していた。無論運ぶのは俺の役目である。運び終わった頃にはシュワルツェネガーもびっくりの筋骨隆々の男前になっているような気がしたが、そんなことはなかった。しかし、のちに俺がアメリカで市長になることになるというのは、後で聞いた話になる。

 猫のキャラクターの香り付き消しゴムを購入した妹はご機嫌な様子で街を歩いている。俺は5トンのねり消しを背負って苦悶の表情でその後ろを歩いた。長門は歩きながらカレーを食べている。

 こんな日常もたまには悪くはないではないか、などど思い、俺は長門と妹にコンビニでアイスでも買ってやるか、などと考えていたのだった。


 ちなみにパジェロが2330kgであるので、5トンというのは大体パジェロ二台分の重さである。


「長門有希、ときどき音楽」完

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