第11話 坑道戦闘
坑道の奥。道中、何人かの冒険者とすれ違ったがやはり鉱石採取を目的としているのかツルハシを何本も担いでいる冒険者が多い。
それを横目に見ながら、二人は坑道の奥へと進んで行く。
「火薬の匂い、ですかね?」
「発破作業とかしてたんだろうなぁ。何か情報あるか?」
「リリアーナさんからは何も。もしかして、地下でしょうか?」
「それだろうな、たぶん。一応注意するって事で進もうぜ」
そうなると合点がいく。地下は恐らく発破作業の最中かその後。立ち入り禁止になっているので地図には記されていないのだろう。
「早速獲物が来たぜ。ゴブリンが6匹。弓持ちが2匹だ。厄介だなぁおい」
「ボヤかないで下さい。援護します、前衛はお任せします!」
「オッケー!んじゃあボコってやろうぜ!」
弓持ちゴブリンの矢が放たれ、アルフレッドがガントレットで弾き返すと同時に戦闘が始まる。
アルフレッドは突っ込まず、ゴブリンが襲い掛かってくるのを待つ。前回のゴブリン戦で、分断された経験を二度も体験しようとは思わなかった。ゴブリンが持つ粗末な剣が振り下ろされ、アルフレッドは剣の側面に裏拳を叩き込んで刀身を粉砕。構えた片手でゴブリンの頭蓋を真正面から正確に穿ち、頭蓋骨を粉砕させた。
「ひとぉつ!」
返す刀ならぬ返す拳で、アルフレッドによって仲間のゴブリンが瞬殺され、驚きの表情で顔面を染めている1匹に近づき、頭を片手で掴み、頭蓋骨を握り砕きながら後ろにいる弓持ちゴブリンに向けてぶん投げた。
「ふたぁつ!」
「やりますね!」
アイリスも見惚れている場合ではないとショートソードをぶん投る。
ショートソードはまっすぐに弓持ちゴブリンへと飛んでいき、弓を番えていた腕を切り飛ばした。
「外しました!」
「腕が吹き飛んだから問題ねぇ!それより武器は!?」
「これがあります!」
念のために組み立てたままにしておいた携帯型ツルハシをアイリスは取り出した。
これからは投げナイフでも買っておいたほうがいいかもしれないだろう。そう思いながらアイリスはツルハシの先をゴブリンの喉元に突き刺した。
「オラァ!」
そのゴブリンをアルフレッドが蹴り飛ばす。吹き飛んだゴブリンは喉から血を吹き出しながら飛んでいき、坑道の壁に激突して息絶えた。
「みぃっつ!」
残るは3匹。そのうちの2匹の弓持ちゴブリンは既に死に体だ。残る1匹も二人の強さに怯えていた。すかさずアルフレッドが間合いを詰め、ゴブリンの腹を思いきり殴り壁にまで吹き飛ばす。気絶したようで、ゴブリンは動かなくなった。
「はぁあああ!」
アイリスも負けじと片腕を失った弓持ちゴブリンに近づき、ツルハシを振り下ろす。だがツルハシは宙を切り裂いた。ゴブリンが必至の形相で飛んで避けたのだ。
しかしアイリスはそれを許す程優しくはない。飛んで避けて転んでしまったゴブリンの頭を思いきり蹴り飛ばして頭を2,3度踏み付けた。顔がぐちゃぐちゃになったゴブリンは当然の事ながら絶命する。
仲間の死体で吹き飛ばされて今まで倒れていたゴブリンも、アルフレッドの頭を破壊されて死んだ。
「一丁上がりっと。やっぱ殴りやすいのは良いモンスターだな」
「スライムだと本来は打撃では倒せない筈なんですけどねぇ......」
「衝撃を表面にだけ与えるからダメなんだよ。もっと中にある核にまで衝撃を届かせないとさ?」
「それが出来れば苦労しませんってば...」
ショートソードを拾い上げながら、アイリスはランタンで周りを照らしながら確認する。どうやらゴブリンは全て銅貨になったようだ。辺りに敵影はなかった。
「まだ行きますか?」
「時間的に余裕あるしな、行こうぜ」
「本音はまだ戦い足りないって顔、してますよ?」
「ハハハ、バレたか。しょうがねぇだろ?そういう性分なんだよ」
「えぇ、しょうがなくありませんよ?勿論、望むところです」
二人は更に坑道の奥へと進んでいく。
そうすると2匹のジャイアントバットが姿を現した。
「初めて見るヤツだ!」
「ジャイアントバットです。ゴブリンより脅威度は低いですが、飛び回るので攻撃は当てづらいと思いま.........あれ?」
アイリスがアルフレッドに注意を促そうとしたその時には、2匹のジャイアントバットは既に地面に落ちていた。アルフレッドが壁を蹴って宙に舞い、2匹ともを殴り落したのだ。
「ん?なんか言ったか?」
「説明する前に飛び出すのやめてください!私の立つ瀬がないじゃないですか!」
「いいじゃねーか別に。俺は殴れてハッピー。アイリスは楽出来てハッピー。悪いとこはなんもないぜ?」
「私だってジャイアントバットに興味あったんですよ。もーっ」
「わりーわりー。んじゃ、次からはアイリスがやっていいぜ?」
「そういうわけでもないんですけどねぇ......まぁいいです。次に行きましょう次に」
落胆しながらアイリスはランタンを掲げて前に歩き出す。
暫く歩き、そろそろ坑道の最奥に到達するかと思ったその時だった。
「きゃあああああ!!!」
おそらく、別の冒険者の叫び声だ。声からして女性。二人に一気に緊張が走った。
「アイリス!」
「えぇ、行きましょうアルさん!」
二人は全速力でその場から声の元へと駆け出した。
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