第14話 生徒連合団

山宮学園は、全国各地から集められたダンジョンハンターの卵が集う場所である。

だが、その中にも当然ピンからキリまでの優劣は当然のように存在し、その最たる例がクラス分けなのである。

そして、その中でも選りすぐりの精鋭が所属する集団が存在した。


「団長、聞きましたか? 例の一件について」


ここは山宮学園レベル5専用施設の校舎の一角。

入学式から既に一か月近く経過し、彼らも少しずつ仕事が増え始めていた。


「ああ、目黒の件だろ? 残念ではあるが仕方がない」

「勿体ないですよねえ・・・あのコ可愛いからウチに入ってほしかったのに」

「可愛い、可愛くないの問題ではないぞ。まあ、俺も適任とは思っていたが」


そう言うのは、部屋の中でも一際大きい机に座る二人だ。

一人は、端正なルックスに金の万年筆を片手に持つ男子生徒。

もう一人は、真っ白な髪を腰まで伸ばした美女だ。


「光城の皇帝様と榊原の舞姫様は入団決定的ッスよね? じゃあ、あの青銅の騎士とかいうヤツが最後の三人になるのかなあ」

「仁王子君ですよね? 私は絶対にイヤですよ、あんなのに入られたら他校との交流が上手く行かなくなりそうですし・・・・」

「でも、強いらしいじゃん。いいねえ、面白いよ」


そう言うのは、脇に控えるようにして少し小さい机に座る二人の生徒。

一人はブレザーを脱ぎ、ジャージを着たラフな格好をした男子生徒。

もう一人の女子生徒は、ショートカットに眼鏡の少女だ。


彼らは山宮学園全生徒の頂点に君臨する通称、生徒会連合団のメンバーである。


「素行という意味では、目黒君は団員にはうってつけの人材だったんですが・・・・例の魔眼暴走事件がある以上、他生徒からの支持は受けづらいかもしれません」


彼らが話しているのは、つい一か月ほど前に起きてしまった魔眼暴走事件についてだった。

入学試験を7位で突破した目黒は生徒連合団入りの有力候補の一人だったのだが、

特殊訓練中に魔眼を制御できなくなり、他の生徒を大きな危険に晒すこととなってしまった。


『魔眼持ち』に対する規制は厳しく、当初は停学処分なども選択肢の一つに入ったのだが、担任の波動義久が「責任は全て私にある」と主張したことも考慮され、

一週間の補講授業で手を打つこととなった。


「今年の一年はホント話題が尽きないッスよね。確か、レベル1クラスのコが学年3位なんでしょ? 笑えるんですけど」

「口を慎め、海野。力さえあれば平等に評価されるのが山宮だ」

「ホントにそうっすかねえ・・・・」

「団長はそうでも、余りそう思っていない人は多いですからね」

「そう思ってない人筆頭がウチにいるじゃないッスか。今日はいないですけど」


海野と呼ばれた男は、バックからポテチを取り出すとポリポリ食べ始めた。

誰も注意しない所を見ると、もう注意しても無駄だと考えているのかもしれない。


「で、どうするんですか? 候補生はある程度リストアップしておきましたが」


ショートカットの少女が、団長にリストを手渡した。

その中には、主にレベル5クラスを中心として何人かの生徒の名前が書いてある。

だが、団長はリストを軽く見ただけで机の上に置くと、唐突に告げた。


「わざわざリストを作ってくれたところ悪いが、実はもう俺の中では今年の新生徒会連合団員は決まっている」

「へえ、珍しいね。いっつも決めるの遅いくせに」


横から白髪の美女がそう言うのを若干咎めるような目で見た団長は言葉を続けた。


「光城雅樹、榊原摩耶は決定だ。そうなると、当然問題は三人目になるんだが・・・・俺は、中村健吾を推そうと思う」


団長以外の全員の動きが止まった。


「誰っすかそれ? レベル5にそんな人いましたっけ?」

「中村健吾・・・・何処かで聞いた名前だと思いますが・・・」


ショートカットの少女は少し考えこむが、ポンと手を叩いた。


「思い出した! レベル1クラスで、学年30位に入った人ですね!」

「レベル1!? ちょ、正気ですか団長!?」


だが、団長はコクリと頷く。


「勿論、正気だ。山宮にも新しい血を入れる時期が来たと思ってな」

「アンナさんも何か言ってくださいよ!! 絶対こんなこと言ったら・・・」


だが、アンナと呼ばれた白髪の美女は特別驚いた素振りも見せず、

団長の発言に頷いた。


「来月の生徒連盟団の承認式は大変なことになるでしょうね。でも、団長が決めたことなんだからそれはもう決定事項なんじゃないかしら? それに、承認式で揉めるような人がいたら、そういう人を押さえるのが海野君の仕事でしょ?」


「ああああ勘弁してくださいよお・・・・」


「では、詳しいことはまた後日話し合おう。この件については志納や木野川も含めて精査する必要がありそうだからな」


「じゃ、次の話し合いの時はちゃんと海野君は武装してくるのよ」


「・・・志納さんを止めるのは俺っスか」


彼らは、山宮学園に所属する生徒たちの頂点に立つ通称、生徒連合団。

3年生の団長と副団長、そして広報委員長の三人がトップに立ち、

1年と2年は6人で団員となる。


団長の八重樫やえがしけい、副団長の星野ほしのアンナをツートップに、団員の海野かいの修也しゅうや元木もとき桃子ももこ

が今日の話し合いを進めていた。


最後に話題に出た『中村健吾の生徒連合団入り』が、後日大事件を引き起こすこととなるのだが、それはまた少し先の話である。

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