第11話 クラス分けと課外授業
「ウチのツートップが決まったな。若山と健吾だ」
そんなことをふと言ったのは、再三にわたるテスト中の私語でテスト終了後に雪波から大目玉を喰らった
それに賛同するように
「正直、若山にはムカついてたけどさ。でも、アイツのおかげでアイツらのあんないい顔が見られたんだからな」
テスト結果が全クラスに張り出された後、レベル2からレベル5までのレベル1を除く全クラスでは衝撃が走っていた。
1-1の生徒が上位陣を占領する中で、煌々と輝く1-5の文字がある。
若山夏美、その名前は恐るべきスピードで学年中に広まっていった。
「何回見てもウケるよね! レベル2の奴らなんかポカーンて口開けちゃってさ」
そう言いながら入ってきたのは
1-5のメンツをバカにしようとでもしていたのだろうか。ご丁寧に1-5教室の前でスタンバイしていた彼らにとって、レベル1クラスに現れたニューホープの誕生の知らせは少々刺激が強すぎたらしい。
技能測定 340
学力テスト 90点
彼女の総合成績は何と学年3位だった。
因みに一位は『皇帝』こと光城雅樹、二位は『舞姫』こと榊原摩耶だ。
だが不動の学年ツートップはともかく、その次に来るのがまさかのレベル1クラス出身者というのは前代未聞の話だ。
ただでさえ逸材が多い今年だからこそ、その衝撃はさらに大きい。
しかも、快挙の知らせはそれだけではなかった。
「健吾も凄いぜ! だって学年30位なんだからな!」
「い、いや僕は大したことないよ。若山さんの方が僕なんかより・・・・」
「いやいやいや凄いって! 先生たちが言ってるの聞いたけど、トップ30にレベル1クラスの人が二人以上入ったのって初めてなんだってさ!」
クラス全体から大歓声が上がった。
入学の段階では、レベル1は徹底的に見下されるということが言われていた中で、入学早々から先制パンチを叩き込めたことが嬉しくて仕方がない。
勿論、クラス平均の成績ではレベル1クラスは完敗だ。
クラス平均を一通りまとめると
技能測定 学力テスト
1-1 190 85
1-2 170 61
1-3 142 43
1-4 119 23
1-5 81 11
確かに1-5は際立って悪い。
技能測定はレベル2から5までは三桁台なのに対して、唯一の二桁だ。
学力テストはレベル2クラスの半分以下である。
だがこの二人のエースがいれば何かを変えられるかもしれない。
そんな希望が湧きあがりつつあった。
するとドアが開き、担任の雪波が二枚の紙を持って現れる。
「諸君、まずはご苦労だった。例年に比べれば技能測定とテストの結果はむしろ良かったと言えるだろう。特に、若山と中村の奮闘は見事だった」
それを聞いたクラスからは自然と拍手が起こる。
相変わらず教科書を読み続けている夏美は完全無視状態だったが、健吾は軽くお辞儀するようにしてそれに応えた。
「では、本題に移ろう。この結果を受けてグループ分けを行った結果、以下のように分けられた。まずはAクラスについてだ」
そして、グループメンバーが書かれた紙を雪波は見せる。
Aクラスメンバーは以下の通りになっていた。
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成績順に並べられた名前には、夏美、健吾の二人を筆頭にクラスの成績上位者15名が並べられていた。
「残りはBクラスだ。この半年間はAクラスとBクラスに分かれて授業を行うため、同じクラスのメンバーはしっかり覚えておくように。それと・・・」
そう言うと、雪波は教室の端にいる夏美、そして健吾、あと僅かに横目に見るようにして直人に目をやった。
「お前たちに関しては、クラスルームが終わった後私の所に来るように。特殊訓練に関して北野主任から参加の許可が下りた」
するとようやくここで、夏美が教科書から目を離した。
「じゃあ、私は訓練に参加できるのね?」
「無論、仮にも学年上位三十に入ったのだから、許可が下りるのは当たり前だろうな。葉島に関しては・・・・まあ、お試し体験だ」
「ならいいわ。中村君はともかく、葉島君まで連れていく理由は良く分からないけど」
それだけ言うと夏美は、最早お決まりのような形で荷物をまとめ始める。
「せいぜい私の足を引っ張らないでね。葉島君に関してはハッキリ言って期待してないから、せめて私の傍に近寄らないようにしてよ」
そう言って、夏美は教室を出て行ってしまった。
「ではこれで、一日目は終了だ。それでは解散!」
解散の合図と同時に、それぞれ皆が席を立ち始めた。
そんな中、健吾が直人の席に近づいてくる。
「相変わらず酷い言い方だなあ・・・気にする事は無いよ」
「・・・まあ、別に傷ついてはないけどね」
と言いつつ、メンタルには若干重めのダメージが来ていたが、
直人は気丈に振舞って見せる。
雪波から訓練場までの地図を渡された健吾は、直人の机の上に地図を広げた。
「じゃあ、行こうか。確か特殊訓練って・・・・え?」
雪波から渡された地図を見た健吾は、突然動きを止めた。
目にしている物が納得できないかのように、目を凝らして地図を凝視している。
「・・・この地図、おかしいんじゃないのかな。何で運動場まで行くのにバスがいるんだろ?」
直人も続いて地図を見た。
確かに地図の端に、『無料送迎バスを使うこと』と書いてある。
すると、困っているのが分かったのか雪波が二人の近くにやって来た。
「先生。学校のグラウンドを使うんだったら、何でバスに乗らなきゃいけないんですか?」
「何を言っている? お前たちが行くのはこの学校の敷地外だぞ?」
「・・・・??? どういうことですか?」
すると雪波は、学校から遠く離れたある一点を指さした。
今いる学校が、豆粒に見えるほどの広大な敷地だ。
「お前たちが行くのは、レベル5クラス専用の特別訓練場だ。レベル5の生徒たちは授業も訓練も全員そこで受けている」
「ええええ!!! こ、こ、ここで!?」
「規模も訓練の内容もこことは比較にならん。いい経験になると思うぞ」
全国最高峰の学び舎、山宮学園のトップエリートたちがそこにいる。
だが、雪波は冷たい微笑を浮かべながら言い放った。
「波動はお前たちを歓迎するだろう。特に若山は手厚いもてなしを受けるだろうな」
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