第9話 技能測定

「では、これから技能測定を始める! 全員、スキャナーをスイッチを入れろ!!」


厳つい体に、頑固そうな顔の体育教官が一斉に号令をかけた。

全生徒の腕には腕輪のようなものが装着されており、異能力の力はそこから算出される数値によって計測されるのだ。


「お前たちの異能係数をこの機械は測定する。山宮学園の異能係数の平均値はおよそ150だ。レベル1の一年生であるお前たちはせいぜい100行けばマシだろうがな」


さらりと言っているが、平均値150は相当高い数値だ。

ごく一般的な全国平均値はおよそ30で、高くても50あれば良い方なだけに改めて山宮学園が全国最高クラスのDH養成学校であることを認識させられる。


「では学生番号一番、前に出ろ!」


ハイ、という返事と共に前に出たのは新井修太という男子生徒だ。

彼はスキャナーのスイッチを入れると、精神を集中させる。

すると、スキャナーには72という数値が表示される。


「では次! 前に出ろ!」


そんな流れで、次々と測定が進められていく。

平均的な数値は先程の新井修太と大体同じで75前後辺りで安定しているようだ。

勿論これは決して低い数値ではないのだが、体育教官にとっては相当不満な数値のようだ。

およそ半分くらいの測定が終わった辺りで、教官は一時ストップをかける。

集合したクラス全員に、教官は大声で言い放った。


「揃いも揃ってつまらん数字ばかりだ。流石ドべクラスと言うべきか、やはり今年もこのクラスは底辺の舐め合いをするだけのようだなあ」


ピリッと緊張した空気が張り詰める。


「数値の低さは、DHとしての資質の低さも同然だ。名門たる山宮に無能はいらん」


最底辺クラスの宿命というべきか、教官の罵声は止まることを知らない。

存在意義を否定するかのような教官の言葉は流石に不評を買ったようで、クラス全体から不穏な空気が漂い始めた。

だがここで一人の生徒が立ち上がる。


「先生、僕が証明します。このクラスは無能なんていません!」

「なら見せてもらおうか。俺をがっかりさせるなよ」


立ち上がったのは健吾だった。

真っすぐに教官を見つめる健吾の姿勢を意気に思ったらしく、教官自らが健吾にスキャナーを渡す。

スキャナーを持った健吾は、その場で精神を統一した。

集中力が高まるほど異能力は力を増し、より強力になる。


一瞬、風が吹いたような気がした。

いや、健吾から発せられた力が風を錯覚させたのだろう。

ピピピッという音と共に、スキャナーに数値が計測された。


「・・・・!! 230だと!?」


叩きだされたのは230という驚異的な数値だった。


「に、230って・・・・レベル4なら余裕で入れる数値だよな・・・・」

「い、いやもしかしたらレベル5でも通用するかもしれない!」


周りで見ていた生徒たちも色めきだった。

特に教官は唖然とした様子でスキャナーを見ている。

予想を遥かに上回る数値に、度肝を抜かれてしまったようだ。


「教官、私なら彼以上の数値を出せます」


そんな中、静かにそう言った女子生徒が一人。

今日だけで大分クラスをざわつかせている張本人の若山夏美だった。

教官は、呆然自失とした様子で夏美にスキャナーを渡す。

それだけ健吾の数値はショックだったらしい。


クラスの視線が注がれる中、夏美は精神を集中させる。

すると、スキャナーの数値が途轍もない勢いで上昇し始めた。


「100・・・150・・・200・・・まだまだ上がるぞ!!」


最初に計測した新井修太が驚きの表情で数値を見つめる。

そして、スキャナーが最終実測数値を表示した。


「さ、さ、340だと!?」


340という異次元の数値だった。

レベル4どころかレベル5入り間違いなしの異常な数値である。


「おい若山! お前何でウチのクラスにいるんだよ!?」


そう言ったのは、前半に測定を終えた男子生徒の一人だ。

すると、事もなさげに夏美は答える。


「中学の時の内申が酷すぎたからよ。ホントは受験も受けられなかったけど、当日に学校に押し入って、無理やりテストを受けて認めさせたの」


成程、レベル1にされるわけだ。

実力があるとはいえ、完全に力技で入学した人間を最高クラスであるレベル5に入れるわけにはいかないだろう。


「もういい・・・お前ら後は各自で計測しろ」


籠に入った大量のスキャナーを置くだけ置いて、教官は帰ってしまった。

完全にメンツを潰されるような形になったのが余程恥ずかしかったのだろう。


「じゃあ、計測終わった奴は教室で自習してようぜ!!」

「あっズルい! 絶対遊んでるだけじゃん!」


そんなことを言っている生徒たちの横で、シレっとスキャナーに手を伸ばす

少年が一人。

彼はポケットから銀の指輪を取り出すと、皆に見えないようにして指輪をはめた。

よく聞くと、何かブツブツ言っているようだ。


「数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな数値上がるな・・・・・・」


ピピッ、と音が鳴る。

そしてスキャナーを見た少年はホッと胸を撫で下ろすと記録用紙に数値を書き込んだ。


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その後数値が再集計され、クラスの異能力指数上位5人が掲示された。


1位 若山夏美 340

2位 中村健吾 230

3位 葉島直人 170

4位 向井新  165

5位 篠葉京子 150


主に上位二人の奮闘もあり、近年のレベル1クラスで最高スコアを計測したとの報告が後日1-5教室に届けられた。

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