第2話


春先生のことが好きなんだと自覚してしまえば、高校生の私は単純で。


覚えてもらう為には行動あるのみ。


少しでも春先生の視界に入るように、他の生徒と差をつけたくてテストも授業も頑張った。


授業が始まるギリギリまで先生に話かけにいったり。


休み時間になれば、先生のいる生物準備室によく顔を出しに行ったりした。


4階の一番奥の部屋、階段を登らなきゃいけないし遠いしあまり人は来ない。


扉の硝子窓から先生が一人でいるのかを確認するのが日課だった。


狙うのは、春先生が一人の時。


「春先生」と声をかけると。


鬱陶しがることなく「また来たん?」と話を聞いてくれた。


急いでいる時は適当にあしらわれることもあったけれど、基本的には笑顔で話してくれた。


何より先生のことを少しでも知れるのが嬉しかった。


「春先生」


「なんや〜」


「好き」


「はいはい、おはようさん〜」


毎日のように好きだと伝えていると、挨拶のようになってしまって、よく分からない返事で返されることも多かったけど、呆れたような顔で笑ってくれた。


そんな時間が私は大好きで、幸せだった。

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