あなただけを見つめてた。
じゃめ
第1話
高校時代の私は生物の準備室を覗くのが日課だった。
緩くパーマがかかった茶色の髪。
ラフな格好の上に羽織った、丈の合っていない真っ白な白衣。
高い鼻筋の上にあるいつもちょっとだけズレてる眼鏡の奥で、愛おしそうに水槽の亀たちを眺める優しい眼差し。
今でも忘れられなくて頭に焼き付いた光景。
高校生の時に好きだった生物の
私は18歳で、先生は28歳。
今ならたった10歳じゃない、なんて言えるけど、高校時代の私には物凄く大きな差に感じて、その差がすごく苦しかった。
生徒の前で教壇に立って授業をする春先生は、間違いなく先生だったし、大人なんだと思っていた。
だけどどこか他の先生とは違っていた。
どこが違うのかと聞かれれば困ってしまうけれど、何かが違うと感じていた。
それは、そこら辺に歩いている生徒に混じってもわからないような年齢に合わない容姿のせいなのか。
子供っぽく無邪気な笑顔のせいなのか。
よく字を間違えて、恥ずかしそうに慌てて書き直すかわいい所のせいなのか。
それはわからないけれど。
いつの間にか目で追うようになっていて、いつの間にか好きになっていた。
「
柔らかい声で話す関西弁も。
目にかかるくらいの茶髪を掻き上げる仕草も。
たまにオールバックにしてきて男子にからかわれるようなところも。
それにムキになって反応するところも。
実は身なりに気を遣っていて、白衣の下の私服はお洒落だということも、さり気なく香水を使っているのも。
大好きだった。
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