インドの旅開始

2/1  カトマンズ→ラクソール 


 早朝に起きる。がっ、眠いので二度寝する。


 8時ぐらいに目を覚ます。今日はインドに行くので急いで支度をする。洗濯中の靴下、パンツ、T-シャツは捨てていく。得るものがあれば捨てるものあり、まわりの環境によって必要なものは変わっていく。名古屋の思い出がつまった“ダッチパッション”のT-シャツにはお世話になった。ぶじにチェックアウトを済ませ、タクシーをつかまえてニューバスターミナルへ向かう。


 タクシーを降りるとたくさんの客ひきが寄ってくる。ビルガンジー行のバスに案内してもらい、バスに乗る。一服を入れてバスは出発する。居心地の良かったカトマンズとお別れだ。


 あまり良いとは言えない路面をひたすら走る。しだいに見える木は大きくなり、椰子の木を見るようになる。大きなアロエも生えている。


 一度休憩してバスは到着、かと思ったら別のバスに乗り換える。トイレに行きたいけど、すぐにバスは出発してしまう。一服入れる時間もない。景色にだんだんと飽きてくる。そのまま眠ってしまう。


 目を覚ますとビルガンジーに到着している。すでに6時をまわり、国境は閉まっていると思いきや、どうやら通れるらしい。客ひきのおっちゃんが、20ルピーでイミグレまで連れていってくれるらしい。ついていくと、「え、馬車!」てっきりタクシーかと思ったら、完全に馬車だ。白いウマが一頭、“ドラクエ4”にでてきそうだ。どう進むのかわくわくしながら見ていると、おっちゃんの掛け声とムチの合図で馬は走り出す。めちゃくちゃ遅い! 「パッカパッカ」とかるい足取りで馬は走り続ける。まさか馬車に乗るとは、ネパールの最後に良い思い出ができた。しかし、馬で国境を渡るとは思いもしなかった。


 すこし待たされるが、難なくネパールのイミグレを抜けてインドへ入国する。簡単に通過できてよかった。馬車のおっちゃんについていき、バスのチケット売り場へ案内してもらう。


 案内された小屋には、インド人が座っていてとても友好的だ。チャイ(ミルクティー)をごちそうになり、イスに座って世間話をする。「インド人って、もしかして良い人が多い?」 しかし、バスのチケットを買おうとすると500ルピー。「高!」そんなお金は出せない。インドって移動費が高いのか?


 近くの宿に泊まると伝えると、300ルピーになる。なに! ふっかけていたのか。結局、200ルピーで決着する。言い値が500ルピーなので安く感じてしまうけど、それでも高い。なにが友達価格だ! まったくインド人は。


 馬車のおっちゃんにお礼を言い、お金を支払ってバスに乗る。さすがにインドに入ると気温は暖かくなる。外に出て、近くの食堂でモモを食べていると体が熱くなる。ベトナムで買った白いセーターを捨てる。このセーターも短い間だったけど、相当お世話になった。心惜しいけど、ゴミ箱に容赦なく捨てる。ありがとう。


 バスに戻り、自分の席の窓を見ると、あれ、おかしい? 窓がない! なぜか窓がないぞ。インドのバスは窓がないのか? いや、そんなことはない。他の席はほとんど窓がついている。ふと、嫌な予感が頭をよぎる。セーターは捨てるべきじゃなかったかもしれない。けど、もう遅い。カトマンズで買った大量のパンを食べながら考える。


 バスは出発する。いがいに寒くない。走ってから1時間ぐらいはそう思っていたけど、風はしだいに冷たくなっていく。カーテンで風をさえぎり、ぼーとする。朝からバスに乗り続けている。けつの痛みも気にならなくなっている。


 バスは停まり、休憩がはいる。バスの休憩時間はちょっとした自由時間だ。この時間がとても好きだ。乗客は屋台に集まり、熱々のチャイを飲んでいる。寒くなった体にチャイが染みわたる。まわりの人はまったくの他人、けど、熱いチャイがおいしいとみんな感じているはずだ。無言だけど、和やかな空気だ。


 がたがたの悪路を走り、バスはゆれ続ける。大きく揺れると頭を壁にぶつけてしまう。これがなにげに痛い。気をぬくとすぐに“ゴツン”だ。壁からすこしでも離れたいけど、定員オーバーの最後尾の座席は、よりによって大男ばかり。すきまがまるでない。自分は“がりがり”だからまだいいけど、大きい人はみるからに大変だ。むりに座りすぎだよ。


 何度も頭を痛めながら、冷たい風にひたすら耐えているといつの間にか寝てしまう。


 人間、疲れるとどんな状況でも寝れる。久しぶりの移動は今までのトップスリーに入るぐらい過酷なバスだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る