観光客な一日

1/15  inラサ 


 目が覚めると外は明るい。寝すぎてしまった。隣のベッドの“めがねさん”が荷物をまとめている。“めがねさん”の英語はほとんど聞き取れないので、何を言っているかわからないが、部屋を出るらしい。“めがねさん”のひとり言と、ガムの“くちゃくちゃ”する音が気になっていたのでちょうどよい。自分はドミ(相部屋)に移動しよう。


 歯を磨き、日記を書いてからネットカフェに行く。ペグメールをして、部屋に戻るとまだ“めがねさん”はいる。一緒にチェックアウトするが、どうやら“めがねさん”もドミに移動するらしい。なんだ、結局また同じ部屋だ。“めがねさん”の行動を見ているとイライラするので、部屋にいないようにしよう。荷物を置き、ポタラ宮の見学に出発する。ジョイントを忘れずに持ち、準備万端だ。


 ポタラ宮に近づいたところで、歩きながら一服入れる。うん、うまい! やりのこしがない状態での一服は気分的に楽なのでよりきまる。けど、歩きながらの一服は長時間息をとめていられない。高地というのもあり、息がつづかない。それでもじゅうぶんきまる。


 ポタラ宮に着くが入り口がわからない。人の流れについていくと入り口を発見する。100元と少し高い入場料を支払い敷地内へはいる。今日は雲がほとんどないとても良い天気だ。強い日射しがポタラ宮の白い外壁に反射して色が映える。ポタラ宮への長い坂道をてくてくと歩く。


 ぶりった状態で登るのは息苦しい。なにせ、富士山とほぼ同じ高さだから肺が痛い。けど景色が良いのでまったく苦にならない。ラサ市街が広く見渡せる。ラサは大きな街だな、たくさんの建造物があり、こんな辺境の地でよく発展したと感心してしまう。


 写真を撮りながら歩き、ようやく内部へ。薄暗い建物の内部はお香のかおりが充満している。数多くの仏像と綺麗な装飾、たくさんの異様なチベタン見学者、本当に神秘的な空間だ。壁に写真撮影禁止と書かれているが、かくれて撮っているとチベタンに見つかり、怒られる。うーん、へたをうってしまった。


 ダライラマの部屋など、たくさんの部屋があり、どの部屋にもすばらしい装飾と仏像、そしてバターの火。これだけの建物を建てるにはどれだけの労力と時間が必要だろう? ラサがチベット仏教の総本山かやっとわかった気がする。現実感のない空間を移動している自分が、どこにいるのかわからなくなる。


 いつの間にか出口に辿り着き、下山する。約1時間半ぐらい経っており、あっという間だ。これぐらいの時間が観光するには丁度良い。もうすこし長いとつかれてしまい、集中力が切れて飽きてしまう。アンコールワットが良い教訓だ。


 門を出て、再び人の流れについていき、露天が並ぶ通りを歩く。道はポタラ宮のまわりを囲んでいて、道の脇には、一周まわすとお経を一読したことになる、ぐるぐる回る円柱の道具が並んでいる。みんな歩きながらまわしている。自分も見よう見まねでまわすと、なにげに楽しいな。それにしてもたくさんのお土産屋だ。チベタンの民族衣装が欲しいが我慢する。露店でバナナチップを買い、食べ歩きながら散歩する。

ぐるっとポタラ宮をまわり、ポタラ宮の見学は終了する。近くの食堂でメシを食べるが選択を間違える。唐辛子と豚肉の炒め物の料理は、まるで“デスソース”を食べているみたいだ。中国は漢字のみでメニューを判断しなきゃいけないから、選択を間違えるとひどい目にあう。顔中から滝のような汗がとまることなくふきでる。半分食べた時点でギプアップする。腹に影響が出そうな辛さだ。ホテルに戻り、一休みする。


 まだ夕方で時間はある。一服入れて、昨日の朝に行ったジョカンの方へ散歩しに行く。途中のスーパーでアカすりを探していると、お湯を沸かせる棒コイルを発見する。値段の安さにひかれて衝動買い。


 ジョカン近辺のお土産屋を見ていると数珠を発見する。デジカメのストラップはベトナムで切れてしまったので、ぶら下げるには丁度良い。またまた、衝動買いしてしまう。


 さらに、露店で小さなタルチョのキーホルダーを発見する。青と赤、白と緑を衝動買い。


 きわめつけはチベットのCDだ。チベタントラックの中で、耳に“たこ”ができるぐらい聞いたおかげで、すっかり気に入ってしまった。欲しいものを満足に買い、ホテルに戻る。買い物は本当に楽しいな。


 買ったものを見ていると改造したくなってくる。友人にもらった、竹を編んで作られた小物ケースの紐をとり、そのケースについていた木のビーズを通して腕のアクセサリーにする。数珠はぶら下げたらすぐに切れそうなので腕に巻きつける。カメラのストラップには小さなタルチョをつける。名古屋の“ヴィレッジヴァンガード”で買った皮のストラップは腕に巻きつける。なかなか結べず、てこずるが、ぶりっているおかげで“サル”のように集中する。何とか完成する。思ったよりもいいじゃん! 一緒に過ごしてきた思い出のつまった物を、うまく利用できてうれしい。


 20時をまわり、あたりはすっかり真っ暗だ。昼間の激辛飯が効いていてあまり腹がへらない。ぶりって外を散歩しているとパン屋が目に入り、衝動買いする。腹がへっていなくても、目につくと腹がへってしまう。今日はお金をたくさんつかっている。うまそうなパンを2つで3元ととっても安い。


 パンを食べて部屋に戻り、暇なので日記を読んでから寝る。


 派手なわけじゃないけど、好きなようにお金を使うのは気持ち良い。食べたいものを食べ、欲しいものを買う。使うときは使わないとね。

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