銀行のくせになぜ?

1/5  リージャン→ジョンディエン 


 早朝に目覚める。今日はやっとリージャンから解放される。何時ぐらいに出発しようか決めていなかった。日も昇っていないし、寒いうちに歩いたほうが唐辛子のやけどに悩まされない。すぐにチェックアウトする。


 真っ暗な朝方に、重い荷物を背負って歩くのは現実感がない。たぶん、まわりの古い建物のせいだろう。夜というより、暗闇はパワーを与えてくれる気がする。というよりも、朝だから体力があるだけ? とにかく涼しいのはうれしい。


 バスターミナルに着きチケットを買う。国境の町、フーコーについたときは、バスのチケットを買うのにおびえていたけど、今は余裕だ。すぐに慣れるものだ。肉まんを食べ、バスに乗る。そろそろ景色がすごくなりそうだ。漫画狂のなおき君は「見る景色すべてが絶景」と言っていたので楽しみだ。バスは出発する。


 今日も雲ひとつない青空が広がっている。強い日射しと壮大な景色、中国はとびぬけて景色がいい。外を見ていて飽きないが、車内は暖かく眠くなってしまう。うとうと眠りながら5時間、ジョンディエンに到着する。


 ついにチベットへの第一関門にやってきた。サイゴンでルートを聞いてからどんな場所か考えていたが、あまり大したことのなさそうな町だ。バスを降り、このバスターミナルからラサに行けるか調べる。うろうろしていると、窓口には漢字で“拉薩”とのっている。9:30出発らしい。


 次は宿探しにいくが、リージャンで書き写した地図をみても場所がわからない。人に聞き、宿泊予定のチベットホテルを探す。10分ぐらいしてもわからないのでタクシーをつかまえる。


 バスターミナルからけっこう離れたところに着く。古ぼけた豪華なホテルだ。多くのバックパッカーを期待していたが、そんなようすはどこにもみられない。敷地内のカフェは営業しているかわからない状態だ。人のいる気配がしない不思議なホテルだ。まあ、15元と驚くほど安いからいいけど。


 ドミに荷物を置き、さっそく町をはいかいする。地図を見ながら別のバスターミナルを探す。しかし、いくら歩いてもそれらしき建物は見つからない。唐辛子効果がでて、いつもどおり足の裏が痛くなりはじめる。途中でメシを食べてさらに歩き続ける。


 結局同じバスターミナルでもう一度調べる。やはり1日1本しかでていないらしい。けど、行く手段はあるということだ。チケット売り場で値段を聞くと505元。高いがそんなものだろう。普通にチケットを買えそうだったので、思ったよりも楽にチベットに行けそうな気がしてくる。持ちあわせがないのでさっそく両替に行く。


 大通り沿いにある銀行を2,3軒とあたっていくがどこも両替ができない。なんで、中国は銀行のくせに両替できないんだ! 銀行員の態度の悪さにいらつきながらも、他の銀行を探す。のぞみの中国銀行もだめだ。 


 ひたすら歩き、銀行を見つけては断られる。どこも適当な対応でやさしくない。あたる銀行はなくなり、疲れはピークに達する。足の裏が悲鳴をあげている。最後にあたった銀行で、中国銀行なら両替できると言われる。「さっきはできなかったよ」と思い、明日に両替できる場所を探すことにする。だめもとで大きなホテルにもあたって見るがやはりだめ。疲れ果て、ホテルに戻る。


 バスの中から頭が痛くて、気分が優れない。みょうにいらついてしまう。両替できないことにいらつき、もしここで両替できなかったら、と不安になる。とりあえずぶりって寝ることにする。さすがにいろいろと疲れた。


 夜に起きる。まだすこし頭痛はするが気分は良い。ぶりってメシを食べに行く。


 ガイドブックにのっていたチベットカフェに行く。日本語パソコン、日本人、そして情報ノートを期待していたがどれもなし。人は少なく、ガラが悪く、英語のみのパソコン、すぐに店を出る。


 店の前の看板に日本語のメニューが書いてある店を発見し、中に入ってみる。しかし、期待していたものは何一つない。ニラが大量にのっかった他人丼を食べてから戻る。


 暇なのでチベット用の服をフル装備する。暖かい! 期待以上の暖かさだ。特に公安コートはびっくりするぐらいだ。足が若干弱いが上半身はばっちりだ。そのままの服装で眠ってしまう。


 のどが痛く、体調がすぐれない。チベットの不安は近づくにつれ高まる。ちょっと疲れ気味かも。

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