準備OK!

1/6 inジョンディエン 


 早朝に目が覚める。まず一服入れてぐだーっとする。今日は二つだけやることがある。


 外に出るとチャリが置いてあるので、近くにいたおっちゃんに借りれるか聞いてみる。どうやら大丈夫らしい。前輪が大きく、いかにも中国映画に出てきそうなチャリだ。ペダルは重いが、スピードにのったら速そうだ。チャリにのって中国銀行に向かう。


 朝はやっぱり寒い! 昼間とはえらい違いだ。中国銀行は遠く感じ、到着するとすでにへばり気味だ。ささやかな期待をして中に入り、従業員のおじさんに聞いてみる。窓口まで案内されいける雰囲気だ。だが、窓口のお姉さんは「NO!」ここら辺じゃ両替できないので、リージャンまで行かないと両替できないらしい。ああ、頭の中でちらついていた嫌な予感は、現実に起こりそう。とぼとぼと銀行を出る。


 「じゃあ、すぐにリージャンに行かなきゃ!」目の前に高級なホテルがあるので、だめもとで中に入ってみる。レセプションで両替できるか聞くと、「えっ? できるの?」お姉さんはうなずき、札を渡すと平然と両替してくれる。やったー! これでリージャンに戻らなくてすむ。なんか、あっけなく両替できたな。これでお金の問題は解決した。あとはバスチケットだ。腹がへっていたけど、そのままの勢いでパスターミナルまでチャリをこぐ。


 少し緊張しながら、中国人っぽいふるまいでラサ行きのチケットを頼むと、残念! 3秒でばれる。別の職員が来てなにやら説明してくれる。まったくわからない。メモ帳に漢字を書かれ、ここに行きなさいと言われる。あーーーあ、失敗!

どうしよう。無気力状態でチャリをこぐ。もらった紙には“~~酒店”とホテルの名前が書いてある。疲れて探す気になれないので、きょろきょろしながら宿へ向かう。そういえば腹がへっている、何かを食べよう。あーー! “~~酒店”がある! 


 大きな建物の入り口は閉まっている。やけくそになり調べることにする。紙には二階と書かれてあり、ホテルのガラスには「チベットツアーやっています」みたいな紙がはられている。「陸路に空路、陸路?」 わずかに希望がわいてくる。しかし、どこから入るかわからない。


 ホテルの裏側に行くと階段を発見する。女性がいるのでたずねてみるが、よくわからないらしい。人民に聞いてもあまり意味がない。階段を上がると、中はホテルらしく部屋が並んでいる。けど、営業している様子が感じられない。中をうろついていると“TTB”と書かれた部屋を発見する。


 おそるおそる中に入ると、一人の男性がいる。薄暗い部屋の中には、わずかな光が窓から射し込み、男は暇をしている様子だ。あいさつをしてラサに行きたいと伝えると、なにやら紙を見せてくれる。すこしだけ英語がしゃべれる人で助かる。紙には、「空路のチケット23000元」と書いてある。えっ! 陸路は? 


 今は陸路はやっていないらしい。どうしてもと言うなら約10000元で連れていってくれるそうだ。人が6,7人集まれば一人約2000元、けど、そんな金はないし、人数は自分ひとりだけ、それに真冬のチベットに行く人間はみつからなそうだ。


 そうか、期待はあまりしていなかったけど、ショックをうける。バスターミナルからはないのか聞くと、わからないらしい。パーミッションは持っているかと聞かれ、「NO!」と答える。すると、笑いながら握手してきて、バスターミナルへ見に行こうと言われる。よくわからないけど、もしかしたらかわりにチケットを買ってくれるかもしれない。一緒にホテルを出る。


 てっきり車を持っているのかと思いきや、タクシーだ。バスターミナルに到着し、“TTB”の人は窓口にチケットがあるか聞きに行く。自分は遠くから様子をうかがう。


 チベット行きはないらしい。えー! ラサ行きのバスがないってこと? そうか、がっくりする。それじゃ、まんが狂のなおき君に教えてもらった、リタンという街まで行かなきゃいけないかも。けど、“TTB”の人は、今日は9:35にバスは出てしまったので、ないと教えてくれる。えっ?ってことはあるの?


 なんと来週にはあるらしい。それなら来週に行きたいと伝えると、わかったようす。再び窓口に行き、チケットを買うのかと思いきや、買わずに戻ってくる。自分としては、すぐにでもチベット行きのチケットを手に入れたい。だけど、欲を出しすぎるとうらめにでそうなのでがまんする。


 結局“TTB”の事務所に戻り、月曜日の8時にここに来ることになる。その時、バスターミナルまで一緒にきてくれるらしい。バス代550元と手数料60元を払う。少し高い気がするが、他に手段はなさそう。


 これでチベットへの準備はオッケー! 後は運に任せるのみ。メシを食べて宿へもどる。


 ぶりってダラダラする。今すぐにでもラサに行きたいが、あと二日待たなきゃ。あせってしまうが、せっかくなのでのんびりしよう。ということで、ずっとさわっていなかったジャンベをたたく。ちゃんとたたくのはサパ以来かな。はじめはやる気がしなかったが、途中から楽しくなる。


 1時間ぐらいたたいてから、外からパソコンとたくさんの本が見えて、気になっていたノアカフェへ行く。中に入ると、ガイドブックに日本語付のパソコンがある。1時間4元と安い。


 ペグメールをうちながら写真をアップしていると、ブチン! 急に停電になる。ガイドブックを読んで時間をつぶすが、なかなか復旧しない。

しかたなく店を出て、近くのユースホステルにおじゃまする。ここも人はほとんどいない。ガイドブックでラサを調べて部屋に戻る。


 これ以上はやることがないので、本を読んでだらだらする。


 チベットに行ける準備はできたけど、少し不安が残っている。残りのお金は約1200ドルだ。予定よりも多く使っている。最近は豪華に食べすぎた。とはいえ、それでも並みの水準のメシだ。できる限り節約していかないとイランまでもたない。大麻も無駄吸いしすぎているので抑えなきゃ。

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