思った通り

12/29  inダーリ 


 早朝に目が覚めてしまう。夜があける前で、朝日を見るにはちょうど良い時間だ。昨日巻いたジョイントを吸いながら外に出る。


 うす暗い通りには人がまばらにいる。どの国に行っても思うことだけど、地元の人は朝に強い。そのかわり昼寝してる人も多い。湖をながめられる場所をさがす。昨日は夕方だったのであまりわからなかったけど古い建物が多く、歴史を感じさせる町だ。


 30分ほど歩き城壁にたどりつき、階段を登る。すごい眺めが良い! 山のふもとに広がる湖を見わたせて、新市街もみえる。その反対側には大きな山々だ。まだ顔を出していない朝日が山々を照らし、濃い青空とマッチして壮大な景色だ。今現在、自分は一体どこにいるのだろう? 現実味がない、おかしな錯覚におちいるぐらいとばされる。


 写真をとり、朝日が顔を出すまで散歩して待つ。すばらしい朝だ。山に隠れていた太陽はじょじょに顔をあらわし始める。強烈な日射しだ。満足して部屋に戻る.


 部屋で一服を入れてから“四季客季”に行く。ダーリで楽しみにしていたことの一つがビッフェだ。中庭に料理が並んでいるが、なんだこれは? しょぼい! 期待はずれの品ぞろえだ。“チャーファーピンカン”に比べると圧倒的に料理の数が少なく、寒い外においてあるので料理は冷めている。おいしいフルーツジュースはなく、デザートも少ない。だけど、食べ放題なのでぜいたく言っちゃいけない。片っ端から料理をとる。ちょっと物足りないが、ヨーグルトはおいしい。近くにいた韓国人と仲良くなる。ガッツリ食べて部屋に戻る。


 ぶりって買い物に出かける。欲しいものがたくさんあるので散歩しながら探そう。西を見て、東に行き、そして北へ、ダーリの町はいがいに広くて店がたくさんある。似たような店が多いが、様々な店があるので見ていてあきない。茶を買い、靴下を買う。


 一軒の雑貨屋の前に唐辛子が干してあるので少しいただく。大麻をふるいにかけるプラスチックのざるを買い、ゴム手袋を買い、最後に黄土色のしぶいももひきを買う。これは自分の中でのヒット商品だ。安く欲しいものが手に入り大満足。暖かそうな民族靴も安く、ここを出るときに買おう。


 部屋に戻ろうと店の中を通ると、昨日の中国人二人組みがいる。あいさつをして通り過ぎようとすると、ソファーに大きなジャンベが置いてある。すこしたたかしてもらうときれいな乾いた音がする。だれのものかと聞くと、トンちゃん似の中国人のだ。自分の持っているミニジャンベを見せ、すこしたたく。こういう展開を待ち望んでいたよ。


 部屋に戻り、巻き作業をはじめる。おそるおそる買ってきたザルを試すと、すごい! バッチリ種だけ残っている。ざるのおかげできれいに種がとりのぞけちゃう。時間はほとんどかからず、良い物を手に入れてしまった。巻きだめして終了する。


 やることもなくなったので、本棚にあった“はじめの一歩”を読むとはまってしまう。日が暮れても読み続ける。


 おなかがへったので外で米線を食い、再び漫画を読み続ける。


 夜になると、ベンチに日本人がいるので話をする。見た目はりりしく、坊主頭で男らしい。クンフーをやっているらしい。「クンフーって何?」と聞くと、寺に住み込みで修行をしているらしい。おおー! 中華! さすが中国だ。練習は本気の部活ノリでつらく、今は休みなので山から下りているらしい。とんでもない人がいると感心してしまう。高原似のおちゃめな人だ。


 部屋で一緒にぶりって、さらに漫画を読み続ける。そのまま眠ってしまう。


 町はすばらしく、“ねた”はいくらでも手に入る。住んでいる中国人は親切でかっこよく、日本人は個性が強い。本当に良い町に来たと実感する。

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