この“ねた”効くなー

12/30  inダーリ 


 明け方前に目が覚める。腹がおかしい、トイレに行くと大量のゲリがでる。またかー! まだ直っていなかったらしく、ひどい腹痛だ。昨日食べた物がすべてゲリになっている。さすがに焼き鳥を食べ過ぎたな。部屋に戻ってもすぐにスウェル(便通)が襲ってくるので、トイレの前で待機する。めちゃくちゃ寒いが我慢、すっきりするまでの辛抱だ。


 寒い土地は空気が澄んでいて星がとても綺麗だ。だいたい出たのでぶりって寝る。いつになったらゲリは治る?


 目が覚めるとすでに昼間だ。久しぶりにたくさん寝た。とりあえず目覚めの一服を入れる。ゲップをすると卵味、今日は食べるのをよそう。


 中庭にある、二階のお気に入りのイスに腰かけて日記を書いていると、一人の日本人男性がやってくる。いきなり大きな声でしゃべりはじめる。がたい(体格)がよくて、見るからに元気な人だ。大きなジャンベを持っていて慣れた感じにみえる。


 気にせずに日記を書き続けるが、とにかく声が大きいので、その人の会話がすべて耳に入ってくる。にぎやかな頃の“太陽島”に居た人かな、中国語で話している。


 日記を書き終え、おなかがすいたので外に食べに行く。やっぱり我慢できないや。


 メシを食べて戻ってくると、昨日のクンフーの人がいる。その横には別の坊主頭の日本人がいる。一緒の席につき、ジョイントを三人でまわす。


 昨日言っていた寺で修行している人らしい。拳たてのやりすぎでこぶしがいかつい。がたいがよくてかっこいいな。優しい感じの人にゲリの説明をすると、原因を教えてくれる。どうやらウィルス系のゲリらしい。そういえば、誰かが卵味のゲップは“なんとか”だと言っていた気がする。


 そりゃ簡単に治らないわけだ。あきらかに症状は重い。抗生物質を飲めば治るらしく、薬屋で簡単に手に入るそうだ。


 高原似の人は山に戻るらしいのでお別れをし、優しい人も宿に戻るので途中までついていく。聞いたばかりの薬を薬屋でたずねると、すぐに用意してくれる。中国の薬は信頼できそうだ。


 さっそく部屋に戻り薬を飲む。一服入れてやることがないので、本棚から“墨攻”という漫画を手に取り読んでみる。昔、漫画喫茶で一度読もうとしたけど、劇画のような濃い絵がなじめず、すぐに読むのをやめてしまった。けど、読んでみるとおもしろい。そのまま読みつづける。


 夜になり、大麻の吸いすぎと漫画の読みすぎで、頭がもうろうとしている。声の大きいエネルギッシュな人もいつの間にか戻ってきて、ぎこちなく会話する。ぶりのせいか、人見知りをしてしまう。それほど、ここの“ねた”は質が良い。


 “墨攻”を読み続けていると、エネルギッシュない人は近くにすわり、なにげなく会話をする。ジャンベと大麻の話になり一緒に吸う。


 ごろうさんという名の人は35歳と立派なおっさんだ。ごつい腕にはタトゥーがはいっており、ラーメンマンのような髪型をしている。サングラスをかけているが、うっすらのぞける目を見ると、つのだ☆ひろに似ている。


 ジョイントをごちそうになり、さらに話をつづける。優しい人だけど、すこしかたいところがある。真面目で本気な人だ。ギターが弾けてジャンベをたたき、曲もつくるらしい。“高橋歩”みたいなところがある。年齢もほぼ一緒だったはず。ちょっと口うるさいとこもありそうだけど、謙虚で、面倒見がよさそう。なにより、とても親切な人だ。こういう人は好きだ。


 眠いらしいので「また明日!」と言って、席を立つ。眠くない自分は“墨攻”の続きを読みつづける。


 なんとか読み終えたが、頭はほとんどはたらかない。漫画を読み終えた後に、はっとする現実が大好きだ。漫画の世界と自分の今いる状況のギャップがなんともいえない。すこしずつ現実にもどされる。ベッドに横になりすぐに眠りにつく。


 ほとんど何もやっていない。ひたすらぶりってばかりの一日だ。こんな一日もたまには良いものだ。明日は大晦日、今年も終わりになる、いろいろとふり返らなきゃいけないかも。

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