第5話 謎は全て解けた!!(仮説です。)
皆さんおはよう!早速トレーター家に来てみたらなぜかお父さんを加えた三者面談です。正面にいます。メッチャにっこりしてますが敵意ビンビンに感じます。ヤバいですこの人、絶対強いです。そしてお嬢様は隣に座っています。この状況で右手を使えないのは何か不安です。お嬢さんどいて、利き手使えない。そんな現実逃避をしていると目の前のおっさんが話しかけてきた。
「君は一体何者なのかね?いきなり娘の部屋にあんな姿で現れて。」
ぐふっ、あの黒歴史がいまだに俺を蝕む…※昨日のことです。
「お父様、この方は私がお呼びしたのです。あんな格好をされていたのは…趣味だと思います…」
「全く違いますよ!あれは不幸な事故です。」
「フム…事故ね…どうやったら、娘の部屋で、あんな姿で現れた輩のそんな戯言を信じられるのかね?」
あ、やべぇ、次の言葉間違ったら攻撃受ける。しかもなんか姿見えないけど俺の後ろから魔力を感じるんだよ。多分奥さんだね、一流の魔術師ってすごいね!お前があんな状況でこっちに送ったんだろ!何とかしろ猫耳!
そうやって俺が心の中で罵倒していた時に着信音がした。
「ん?何かね今の音は?」
「ちょっと失礼!」
すぐさまスマフォを確認する。メールが届いてる!俺は救いを求めてメールを開いた。
(トーヤ、家から持ってきた指輪を出してください。そして常に身に着けておいてください。後はこちらで説明します。)
そう書いてあったので、アイテムボックスから指輪を取り出した。
「そのカードは一体?それよりもその指輪、少しいいかね?」
おっさんは何か血相を変えて指輪を奪い取った。今のうちに帰っちゃダメかな?多分動いたら後ろから撃たれるけどね!
「君…この指輪をどこで手に入れた?」
「それは家のひいばあちゃんの形見です。」
そう言うとなんかおっさんの手にある指輪が光った。ついでに俺から奪った指輪も光った。すると、空気がなんか変わった気がする。奥さんも警戒して姿を現してるし、隣のお嬢さんも子供ではなく狩人の目をしている。やべぇ、超アウェイだよこの空気、帰っていいかな?
「お取込み中のようなのでこれで失礼しますね。」
無理だった。体が動かない、他の三人は動いているのに!すると指輪からあの猫耳女と、なんか知らんがおっさんに似ている男が出てきた。
『初めましてアイギス、ティア。そしてお久しぶりですねカトリーナ。』
「ホーリー様!アンドレアス様!何故ここに」
『このままではトーヤが危ないから出てきたんだ、今回の手違いでの…その…あれのことでね。あまり長く話せないが、彼には何の罪もないことだけ説明するよ。』
「これは…一体?」
「リーナ?これはどういうことなの?」
『信じられないかもしれないが、これから話すことは全て事実だ。結論から言おう。私はトレーター家初代当主アンドレアス。そして、妻のホーリーだ。』
『これからあなた達二人にリーナの記憶を体験してもらいます。』
「ちょっと待ってくれ、そんなことを言われてもなんのk
「あ、俺ももう一度見せてもらっていいですか?」
『…分かりました。トーヤにももう一度記憶を体験してもらいます。』
「あなた、落ち着いてください。ホーリー様、それはリーナにとって大事なことなのですね?」
『はい、リーナの未来に関わります。そして、今この時でしか出来ないことです。』
「分かりました。お願いします。」
『リーナもよろしいですね。』
カトリーナの方を見ると、体が震えていて泣くのをこらえているような表情をしていた。
「リーナ大丈夫か?」
「はい、お父様。」
見つめ合う親子。
「分かりました。その記憶を見せて頂きたい。」
「…今からお見せする記憶は大変ショックが大きいです。心してください。」
「あ、待ってください、この間みたいに頭に直接流すのはやめて、映画みたいなスクリーンで写すことは出来ますか?あのやり方だと客観的に見れないんで!」
「映画とは?」
「俺の考えを読めるでしょ?」
さっきも俺が何とかしろと念じたら、こうやって現れた。メールの時も明らかにタイミングが良かった。絶対読めてるねこいつら。
「……分かった。」
そう言ってアンドレアスは俺たちに掌を向け、光を放ち、カトリーナの記憶を映した。
「……このような事が…」
「……っ」
アイギスが呆然としてつぶやき、ティアはリーナを涙を流しながら抱きしめている。リーナもきつく目を瞑って震えている。そしてホーリーとアンドレアスが沈痛な表情でトレーター家を見ている。やべぇ、なんか今日はやべぇしか言ってない気がするけどやべえ、メッチャスマフォ弄りたい、よし!弄ろう!この空気から逃れたい。だってなんか俺異物感半端ないんだもん!俺此処にいていいの?!メッチャ気まずいんですけど。何なら今過去の黒歴史を積極的に思い出してもいいくらい此処にいたくないもん!あれは確か中2の頃…ぐはっ、この空気と胸の痛みでメッチャ消えたい。駄目だ俺!かえってマリアたんを思いっきり愛でるんだろ?マリアたんを100回引いてオリジナルボイスを手に入れるんだろ!「これからも一緒にいようね?」って言ってほしいんだろ?そうだ、落ち着け俺、素数を数えるんだ。孤独なものを見ると俺だけじゃないんだと勇気をもらえるんだ…うん、俺負けない!
『そして、助けを求めたのがここにいるトーヤだ。もう気づいていると思うが、彼は私の姉、カトアリアスのひ孫にあたる。その証拠がその指輪だ。』
「「「「??!!」」」」
全然気づいてませんでした。というか歴史書にも亡くなったって書いてたし、ひいばあちゃんの名前アリアだし!旧姓も加藤だし!戦中の日本でハーフで迫害されていたところをひいじいちゃんが保護したのが出会いだって聞いてたし!
加藤アリア→カトウアリア→カトアリア→カトアリアス…??!?!まじで?!戦時中の混乱期だからってひいじいちゃんどさくさに紛れて異世界から嫁見つけてきたの?!時空超えてるよ!確かに生前は、
「とうちゃん…男ならこの女が欲しいと思ったら、全力で行け。その手を掴んだら決して離すなよ。とことん食らいつけ」
って、大胆なこと言ってたが、食らいつき過ぎだろう!さすがひいじいちゃん!俺たちに出来ないことを…あ、俺も2次元嫁がいるんだった。なんだ、相沢の血をちゃんと受け継いでいるんだね!じゃぁ、トレーター家は親戚?親戚が増えるよ!やったね冬ちゃ…危ない危ない現実逃避しすぎて、危ないネタに走るところだった。
「本当ですか!?それなら確かに、行方不明だったはずの神双の指輪を持っている理由もわかりますが…」
「お父様、神双の指輪とは?」
「トレーター家に伝わる家宝だ。アンドレアス様より前の時代の言い伝えだが、魔物と心を交わせる力を持つと言われるトレーター家がなぜ、そのような力を得ることが出来たのか…それは最初にテイムしたモンスターが神獣と呼ばれる鳳凰の眷属、フェニックスだからと言われている。その時の当主が亡くなる際フェニックスも灰となり、すぐに復活したが、その時残った骨から2つの指輪を作り、残った家族に与え、空の彼方に去って行ったと伝わっている。その指輪の力なのか、トレーター家に特殊な力が備わった。それが家業となったモンスターテイムであり、我々以外ほとんどテイマーがいない理由だ。それが本当ならば神器と呼べるものであり、もし権力者に知られるようなことがあれば、恐らくどのような手を使ってでも奪いに来るだろう。だから、この話は代々の当主に受け継がれているんだ。しかし、アンドレアス様の時代に一つ失われ、残っている一つがトレーター家当主に受け継がれ続けている。」
『トーヤ、カトリーナ、時間がないよく聞くんだ。然るべき時が来れば、祭壇に向かうんだ。そし…彼ら……けて……い、私た…………………………スと、…………………ア…を、…………い…いま………しんで…る……………世界……………どう…………い。カ………王都…………………ぞ。』
突然回りが光りだし、元の部屋に戻った。時間がないって、これ確実におっさんのせいだな!説明長ぇよ!指輪の話なんか、我が家の当主に受け継がれてます。遠いご先祖様の時代からあります。偉い人に知られたら没収されるから内緒だよ?の50文字くらいで終わるんだぜ?長々と話しやがって、テメェは校長か!
「トーヤ君、事情は分かった。つまり、これからリーナに起こる悲劇を止めるために君は呼ばれたのだね?」
「えぇ、そんな感じです。ついでに言うと、昨日得た情報と、あの記憶の追体験で感じた矛盾点から、ある仮説が浮かびましたので、その共有と意見を聞くために今日来ました。」
「私たちにも聞かせてください。」
「お母様…」
「リーナ安心して、私たちは決して死なないわ。私たちが居なかったからあなたをこんな目に合わせてしまったのね。でも、愛する娘の為にじっとしてられないわ。だから聞かせて、これから如何するのかを…」
なら小づくりもっとしろよ、後継ぎ居ないから余計な苦労したんじゃないかと思ったが、俺空気読めるから言わない。
「分かりました。それでは説明しますね。」
まず、俺が感じたカトリーナの記憶の中身で怪しいところは以下の点だ。
1・なぜ王都でのパーティーでカトリーナが大貴族に見初められたのか?
2・両親が亡くなった後の使用人たちは?
3・学園生活について
4・学園退学後とルーティナ家の執拗なまでの攻撃
5・カトリーナについて
だ、まず侯爵の嫡男の婚約者になった件についてだが、何故、そのまますんなり婚約者に収まったのだろうか?子供の言ったことと言えど貴族である以上、そこには必ず権力的な思惑が存在するはず。まずカトリーナではなくフォーチャー家のタリアを差し置いてとは考えにくい。そもそもタリアはまだ婚約者はいないはず、そして家柄は同じ侯爵であり、この辺境を守る大貴族だ。わざわざ寄り子のしがない男爵の娘が婚約者など、子供の言ったことと一笑に付して何も無かったことになったはずである。そうしないと、フォーチャー家が良い顔をしないと想像しておかしくないのだ。態々争いの火種を作ることなどないと、周りの大人たちが考え、動かないとおかしいのである。そもそも、このパーティーに何故トレーター家の娘を連れて行ったのかが分からない。護衛名目でアイギスを連れて行くだけならともかく、寄り子の中でもっと上の階級の子息を連れていくはずである。このことから、このパーティーにおける騒動は仕組まれていたのではないかと考える。
「フォーチャー家がそのようなことを考えるはずがない!その考え方は強引すぎる。」
「私もそう思います。なぜ御屋形様方がそのようなことを?」
「まぁ落ち着いてください。それは後に説明します。」
次に2についてだ、昨日宣言したように、使用人たちのトレーター家に対する忠誠には疑いようもない。なのにどうして、一人でいるカトリーナを誰も支えようとしなかったのだろう?
「それは…考え過ぎではないですか?あの時はだれの言葉も耳に入らなかったと思い…ます。」
「記憶の追体験ですよ?一度もマリーさんたちに慰められてるところを経験していないですよ?ご両親も慰められているシーンを見ましたか?むしろ、この体験では王都に行って以降マリーさんたちは不自然なまでに出てこない。」
「…っ」
「アンドレアス様やタリア様についても同様です。昨日お聞きした後で考えると、むしろそこが最大の疑問でした。」
その3、学園生活について、たった1学年しか違わずずっと可愛がっていた妹分のことをタリアが気にかけなかったのは何故か?確かに、自分の父の命令で、両親を喪ったカトリーナに対して負い目はあったであろう。しかし、何故学園でのことでは味方にならなかったのか?カトリーナが14ということはタリアは15である。卒業までの2年間、同学年の人間がカトリーナに行っていることを全く知らなかったとは考え辛い。ましてや自分の家の寄り子の婚約者が、公然と浮気しているのである。いくらなんでも、フォーチャー家当主に話がいかないというのは不自然だ。そして、いくら相手が実質上でも、名目上は同じ侯爵家、動かないはずがない。なぜなら、多くの寄り子を抱える寄り親として、その行為は致命的である。なんだかんだ言っても貴族は自分の家の利益に敏感である。寄り親が寄り子を全く守らないとあれば利用価値なしと判断され、多くの寄り子は離れていくはずである。いくら侯爵でもそうなれば権力を維持することは出来ないであろう。であるならば、このような状況を許すはずがないのである。カトリーナからの手紙が送られた時点では、すでにこの事態を把握していたと考えるのが自然だ。なのに心配だの手紙一つで終わりなのは明らかに不自然だ。
「確かに…不自然だ…」
「そんな…まさか…」
そして最も不自然な点、ルーティラ家令嬢のアリナとただの一度も、会話どころか対面したことすら無いことだ、いくら周りに阻まれていたからと言って2年間も遠目にしか見たことがないなどありえない。もっと決定的なのはあの卒業式の時、婚約破棄の場でさえ、アリナと対面していないことだ。皆アリナの名前を呼ぶが、はっきりとアリナの顔認識できなかった。スクリーンに映して、別視点で見ても分からないのである。
「一体これはどういう事でしょう……?」
「そして、一番不自然なのはあなたですよカトリーナ様。」
学園退学後のことを考えてみよう。ルーティラ家とラプス家の申し立てがあり、死罪の代わりに国への奉仕義務が課せられた。それがあろうことか治安維持のためのモンスターの間引きである。15歳の女子にこの仕打ちだぞ?冤罪とはいえ、他の学生への嫌がらせだけで、学生相手にこの罪は重すぎる。退学処分だけで十分な罰を受けていると考えられる。それに退学後も秘密裏に報復するならともかく、すでに処分を受けている彼女を、仮にも大貴族2家の名をもって国に申し立てをするなどありえない。逆に自らの器の小ささを宣伝しているようなものである。権力者というのは大概見栄を張るものだ。それなのにすでに済んだこと、しかもきっかけはラプス家の不義であり、それは公然の事実である。このような事をすれば、この2家を追い落としたい他の貴族たちの格好の攻撃の的であるし、パーティーを開いた王家もいい顔をしないだろう。何せそのパーティーでラプス家から結婚を申し出たのである。
そして、国からの治安維持という名目を受けている以上、支給品が全く無いなんてこともあり得ない。あり得るとしても、すべてトレーター家の財産で準備を整えろということくらいだろう。事実、粗悪だが支給品があったし、トレーター家の財産を没収されるという判決は下っていないのである。ならば、きちんとした装備は家の貯えを使え、と言われていると考えるのが自然だろう。そして、フォーチャー家への賠償も無かったのである。。なのにカトリーナは、国から受け取ったわずかばかりの討伐報酬しか使わず、そのことに疑問すら抱かなかったのである。そして、不自然な冤罪がここでも起こり、あからさまにルーティナ家の兵を他所様の街に向かわせる。大貴族の兵だぞ?いくら遠いとはいえ、あんな目立つところでの大取物など、自ら自己紹介しているようなものじゃないか!極めつけは、ルーティナ家を襲撃した時だ、その時もやはりアリナは居なかった。そして、ルーティナ家の襲撃後、あれだけ憎んでいたアリナのことが、全く頭に浮かばず、復讐は成功したと思い込んでいたことだ。あり得ないだろう?マリアスとの間に出来た子をトレーター家の次期当主としてお家再興しようとしたんだぞ?何故アリナがそうしないと思った?ここで確実に殺さなきゃルーティナ家を滅ぼすことなんてできないんだぞ?それなのに、絶対に忘れることのできない人物を何故忘れたんだ?
「………」
「………」
「………」
3人とも黙っている。そりゃそうだ、これだけ不自然な状況を不自然と認識していなかったのだから、そしてここからが本題だ。
「お分かりですか?カトリーナ様。あなたの身に起こったことは不自然なまでにあなたを不幸にしている。いえ、あなた自ら不幸になろうとしています。」
「………」
「そして、先ほど言ったフォーチャー家の不自然さについてですが、アイギス様とティア様が1500名の兵を率いて、モンスターから街の防衛任務に就きました。アイギス様は分かります。トレーター家当主として、フォーチャー家の名の下に街の防衛に臨むのは、しかしティア様は魔術師とはいえ、ただのトレーター家の婦人ですよ?なぜあなたが出る必要があるのです?」
「私は…魔術師です。戦う力が有るからではないですか?」
「なら他の家は?普通このような滅多にない手柄を立てる場を、言っては何ですが、たかが一男爵の夫婦しか招集しないなどありえますか?他にも子爵家や男爵家で手柄を立てたいものなど掃いて捨てるほどいるのですよ?フォーチャー家は私兵とトレーター家の夫妻しか戦力を持っていないのですか?」
「そのようなことは…ありません…」
「そして私には、ホーリー様から賜った神器があります。」
そういってスマフォを出す。
「それは先ほどのカードかい?」
「これはスマフォと言って、まぁ俺の世界では誰でも持っているものですが、こちらの世界に来るにあたってとある機能を着けてくれと要求しましてね、今出します。」
そう、このスマフォは写した相手のパラメーターを見ることが出来る。さらに、ホログラムを出すことが出来る。やはり言葉だけより、目で見る方が分かりやすい。死骸相手に使用できるかどうかわからなかったが、あの居た堪れない空気の中、必死にスマフォを弄っているときに試した。そしたら使用できたので映す。
「まずこれがあのドラゴンのパラメーターです。」
アーマードラゴン ☆7 (ドラゴン族)
HP3000
MP2000
攻300
防1500
魔攻300
魔防200
素早さ250
器用さ150
賢さ80
ラック5
硬化:防が300アップ
気弾:40
「そしてこれがお二人のパラメーターです。」
アイギス・フォーチャー・トレーター
HP1800
MP150
攻380
防350
魔攻500
魔防470
素早さ390
器用さ420
賢さ85
ラック4
ティア・トレーター
HP1100
MP900
攻110
防70
魔攻1440
魔防980
素早さ190
器用さ350
賢さ97
ラック7
火魔術(フレイムブリッツ:30 フレイムランス:20)
雷魔術(ショック:15 スパーク:25 サンダーレイン:40)
風魔術(ウインドショット:10 ウインドチェンソー:25 ハリケーン30 クワトロタイフーン:50)
聖魔術(プロテクションシールド:20 キュア:10 ピュアポイズン:15 ピュアパラライズ:15)
ちなみに一般的な兵が、
HP120~180
MP16~24
攻60~90
防40~60
魔攻0
魔防0
素早さ40~60
器用さ40~60
賢さ50
ラック5
が、大体の平均らしいです。分かりますか?
「大体な…項目ごとに私の能力が示されているのだろう?便利だな、まさに神器と呼ぶにふさわしい。」
「ええ、その通りです。そして今回出現したアーマードラゴンとの相性が、あなた方といいのです。特にティア様は魔術師であり、高い魔攻を持っているので、条件さえ揃えば一人でも完封できます。逆に負ける方が難しいのではないでしょうか。」
「だが、他にもモンスターが大量に居たのだろう?数で押されたのではないか?」
「パラメータを見たでしょう?ハッキリ言ってあなたと奥様のパラメータと比べたらゴミですよ?つまりあなた方二人が死んだ時点でドラゴンの討伐などありえない。しかし報告した兵は1500名の命とあなた方を引き換えに討伐できたと言っていた。が、不自然です。」
「…確かに…私が率いていくとするなら、私と妻の二人でドラゴンを相手取り、他の兵たちに他のモンスターを相手取らせる。」
「そうするでしょうね、実際あの場に残っているほかのモンスターのパラメータは、兵が2,3人で掛かれば十分討伐できる強さでした。ですので今あなたが言ったような相手取りをしたでしょうね。
「しかしそうすると、私たちがドラゴンと相打ちになり、他の兵もモンスターに倒されたと考えた方がいいのではないですか?」
「言ったでしょう?条件がそろえばあなた一人でも完封できると、そしてそこに近距離戦に特化したアイギス様がいた。ならばアイギス様がモンスターからティア様を守り、ティア様がドラゴンへの攻撃を一手に引き受けたのでしょう。」
「確かに…」
「私たちはそのようにしてきましたからね。」
「ということでここからが俺の仮説になります。この時、お二人の連携で恐らくドラゴンを倒せた。そして、何者かに暗殺された。いくらお二人でも仲間と思ってる者からの不意打ちなら、その者の実力次第では害される可能性がある。」
「……」
「そして、周りであなた方を見ていた兵も多いはず、突然のことに呆気にとられてもおかしくない。しかし戦場でそんな隙を作れば命取り、多くの兵たちが命を失ったはずです。特にその現場を目撃して呆気にとられた兵士たちは、もしかしたら、うまくモンスターから逃げられた兵士もその下手人もしくは下手人たちに戦場のドサクサでやられてるかもしれませんね。」
「しかし、それでもあれほどの人数がいるのだ、見たと気づかれずにいた者もいるはず。それにいったい誰が私たちを?」
「もし今の仮説が正しいのならば、報告した兵士が怪しいですね。そしてその兵士はフォーチャー家の兵です。」
「フォーチャー家が…何のために?」
「さあ?」
「ふざけているのか?」
「いいえ、単純に分からないんですよ。そもそもこの仮説が強引だってことは自分でも思っていることですしね。」
「世の中には口にしてはいけないこともあるんだぞ?」
「ならばあなたはこの不自然さに納得いく回答を出せるんですか?」
「出せないな、だが君も強引だと認めただろう?」
「ええ、ですので、仮設その2、この不自然さには第3者の介入がある可能性。」
「第3者?いったい誰ですか?」
「人ではないと思っています。昨日のあなたとの会話でそう思いました。」
これにはホーリーからもらったチート全世界全言語・文字翻訳が関係している。その効果は、
全世界全言語・文字翻訳 すべて世界のすべての言語と文字が【理解できる】。
である。単純に異世界の言葉が翻訳されるだけだと思っていたが、この理解できるという部分がキーだ。昨日知ったこの世界の貨幣や長さの単位を考える。まずは貨幣だ。
1円
5円
10円
50円
100円
500円
1000円
・
・
・
と、このように聞いたが、もしこれがスキルの効果で、日本と比較して違和感なく俺が理解できた結果だとしたら?次に長さである。
1mm
10mm=1cm
100cm=1m
1000m=1km
と、このように日本と同じ単位、しかも繰り上がりの単位まで同じである。もしこれが、俺の知識に合わせて翻訳しているとなると?と思い生物でも試してみた。それが彼女の記憶で見たダチョウ(グリオリス)である。1度目は追体験ということで、グリオリスと俺の耳には聞こえていた。そして地球でいえばダチョウと見た目は違いがない、少し大きいくらいだろうか。そのことを考え彼女と会話してみた。
(
「そういえば、記憶にあった森で卵を取り返しに来たダチョウですが、此処の樹海にも住んでいるのですか?」
「グリオリスですか?確か目撃例があったと思いますが、ツニク大樹海では深部に行かなくては遭遇しないと思います。そして、ストールの近くの森に限らず、様々なモンスターがこの国にはいますが、ツニク大樹海に存在する同種のモンスターは基本的に危険度が1段上がると思ってください。」
)
俺は確かにダチョウと言っているのに、彼女にはグリオリスと聞こえているようだ、つまり、このスキルは、俺の知識に合わせて俺が理解できるように、自動で翻訳されているのではないか?地球でさえ国が違えば貨幣が違うし、長さの単位や重さの単位の呼び方も違う。それが異世界となれば、同じ単位であるなどということはまずあり得ないだろう。つまり以上の点で俺の知識に合わせた翻訳をしている可能性が非常に高い。確証を得るために、サンドーコとバーロを見せてもらった。最初、俺は道産子とロバだと思っていた。だからこの説はハズレだと思ったが、実物を見てみると、俺の知識にはないモノだった。ここでこの説が正しいと俺は確信した。
ここからが、今までの会話で出た情報の結論だ。この国で過去に起こったダンタリオン事件。このダンタリオンというのは俺の知識の中にある悪魔と同一もしくは同じようなモノではないかと考えた。
ダンタリオン、地獄の大悪魔で序列は71番、その特徴は
・複数の顔を持つ
・人の心を操る
・愛を燃え立たせる
・幻覚を見せる
である。当時中3だった俺は悪魔召喚に興味を…止めよう、これ以上は吐く。話は逸れたが、先ほど述べた俺の知識と合わせた翻訳でもダンタリオンと聞こえた。であるからして、こちらのダンタリオンも同じような能力を持っているのではないかということを調べてみた。
当時の状況と、カトリーナの状況を合わせて考えよう。
・普段おとなしい人間が突然暴れだした。その後多くの人間が狂暴化した。
・カトリーナ自身がなぜか不自然なほど周りの人間を頼ろうとしない。
・あれほど忠誠を誓っていた使用人たちが寄り付きもしない。
・カトリーナを可愛がっていて同じ学園に通っていたタリアが全く関心を示さなかった。
・学園の人間が執拗にカトリーナを責めだした。
・マリウスが10歳の時に男爵令嬢のカトリーナに愛の告白をした。
・さらに学園ではアリナ侯爵令嬢と恋人のようになっていた。
・カトリーナがアリナとの面識はないのに、なぜか彼女を認識していた。
・ルーティラ家の人間を殺害した時に、最も憎いはずのアリナのことを徐々に忘れていった。
などなど、他にも多くの点で思考を操られていたのでは?と思われることが非常に多かった。ダンタリオン事件は王都で起きた。そして、フリオ・フォーチャーは、有力侯爵家当主ということで頻繁に王都とこの街を往復する生活を送っている。来月行われるはずの王都のパーティーに何故かカトリーナを連れていった。そこから両親の暗殺疑惑やその後の不幸の連続、不自然な点が、もし人を操る力を持った大悪魔がかかわっていたら?妄想が過ぎると思うが、シックリくる。なんせ神様がいるのだ。いてもおかしくない。
「という訳です。これが俺の仮説ですね。」
「……話が飛躍しすぎている気がするが…そう考えれば納得できるか…?」
「しかし、何故我がトレーター家なのでしょう?」
「ダンタリオンを討伐したのがアンドレアスだからじゃないですか?」
実際本神に聞ければいいが、何故かあの2柱は決定的な情報を渡さないのだ。これは渡さないのか、渡せないのか…カトリーナの記憶についても、ちょうど今頃から処刑前夜の就寝するまでの記憶しか体験していないのだ。細かいところは関係ないという事だろうか?
「なんにせよ、ただの仮説です。まだまだ情報が足りない状況ですよ。ただ来月一度カトリーナ様を王都に連れていくのを断って下さい。彼女の記憶にそのシーンがなかったのは恐らくアイギス様が決定し、カトリーナ様に伝えたと考えられます。恐らく近いうちにその話があるでしょう。もし、執拗にカトリーナを王都に連れて行きたいようなら…」
「今の話に信憑性が出るという事か。」
「えぇ、もしかしたらダンタリオンが復活してるかもしれませんしね、断言できませんけど。」
「…分かった。とりあえず頭の隅に今の情報を入れておこう。」
「えぇ、不確かな情報を正解だと決めつけて動く時期ではありませんしね。という訳で俺は失礼します。」
「なんだ?まだ昼にもなっていないがもう帰るのか?」
「お嬢様の部屋に現れた不審人物に何言ってるんですか?せっかく家族そろっているんだから他人の俺は消えますよ。」
「そのようなこと気にしなくてもいいのですよ?トーヤ様はカトアリアス様のひ孫に当たる方、つまり私たちの親戚だということが分かりました。ですので不審人物などではなく、我が家のお客様ですよ。ねぇ、あなた。」
「そうですわトーヤ様、それに昨日も大した御持て成しをすることも出来ませんでした。今日も続けてとなると我が家の沽券にかかわります。」
「うむ、トーヤ君今までの非礼を詫びる。そしてどうかもてなす機会を我々にくれないかい?」
えぇ、めんどくせぇ、この国の料理凄く不味そうだったしな…しかも絶対この人たちの見た目は食事中に話しかけてくるタイプだよ。フレンドリーな奴ほぼ話しかけてくるしな。俺の中では食事中のお話はマナー違反だよ?飯は静かに味わいたい派だからね、日本人として、飯とマリアたんには妥協しないよ?
「おk バンッ!!
「リーナ!!無事ですか!!!?」
「タリアお姉さま!!?」
なんかまた食事中に話しかける系少女が出た。しかも絶対うるさいマシンガンタイプだよ。飯冷めちゃうね。なんかカトリーナに抱き着いて身を案じる言葉をかけまくっている。というか他の使用人は?きちんと止めろよ。当主に客が来てるんだから、あれか?主人の主人の娘で、対応が難しいからズルズルここまで来たってことか?マリーじゃなくニーナとルイスがオロオロしてる。この二人何気にいつもいるよね、絶対付き合ってるね!あ、マリーが来た。二人をものすごい顔で見てる。当主と夫人も困惑してるな。そしてすごいな、まだ喋ってるよあの子、話が途切れないのは嫌だね、いい思い出がないな…
あれは確か株主総会の時、業績が右肩上がりで感謝の交流という名目のランチ会があった。その時隣にいたおっちゃんがやたらと話しかけて来て、食べるタイミングがなく、冷めたランチに残念な思いしかなかった。よくもこんな会を開きやがったなと、帰って速攻で株を全部売ったら数か月でその会社の業績が悪くなっていったな…あの会社は今どうなっているのだろう?
そんなことを現実逃避気味に回想していると、あのうるさそうな女の矛先がこちらに向かってきた。
「あなたですか?!カトリーナを○した強姦魔は!」
「お姉さま!?私は何もされてませんって説明しているじゃないですか!!」
「リーナ…忘れてしまうほど辛かったのですね…大丈夫、私がずっとそばにいます。」
「いえ…だから…」
あぁ、これ完璧操られてたわ、間違いないね、っていうかこの子百合の香りが…ここまでカトリーナを思っているならやはり学園での出来事は不自然だな。うん。
「貴方、覚悟は宜しくて?」
何かすごい魔力が高まっているが、黒歴史(ふるきず)を今日、何度抉られただろう…俺だってここまでやられたらグレるぞ!
「ひとつ言っておくが俺がカトリーナを襲うことは無い!全くあり得ない!」
「ならばどうして裸でリーナのベッドにいたのです?!」
「裸じゃないし!上は着てたし!」
「余計にヘンタイじゃありませんか?!」
「ヘンタイじゃないわ!これは愛だ!」
「訳が分かりません!?」
「第一カトリーナは子供だろうが!いくら可愛くても子供に興味はない!」
「?!?!」
おいカトリーナなんでそんなビックリしている?俺は安全だよ~って声を大にして宣言してるんだぜ?
「な…な…それじゃぁ、私が狙われてますの?!」
え?何で?俺と君初対面なのに?それに…
「あ、僕おっきいおっぱい好きなんで、あなたは可愛いけどペチャパイの人はちょっと…」
「なんでそこで素に戻るんですか?!ではティア様やマリーを狙っているのですか?!お二人はまさに大人の女性ですものね!」
おっと?何気にお二人さんこちらに耳を傾けていますね。安心してください。
「いや…ほら…俺とはその…年齢的なものが…範囲外です。」
「「?!?!?!」」
え?何驚いてるの?俺今のナリは子供だよ?それに人妻でしょあなた達、そんなにショック受けること?
「な、ならばニーナですか!容姿も優れていて年齢も若く、胸も大きいですし!?」
今度はニーナが俺を見てる。ルイスは俺を睨んでる。マリア様なら見てほしいがね!まさに天使だぜ!ヒャッハー!
「いえ、パツキンも興味ないですね。」
「?!?!?!?!」
「っしゃあああー」
いや、あんたら好き合ってるんでしょ?何驚いてるんですかニーナさん、ルイスェ…見た目10歳の子供に危機感抱くなよ…
「じゃぁ…誰が好きなんですか?まさか男好き?!?!」
アイギスが目を見開いている。ないです。
「ふぅ~これだから○女は困る。発想が貧困だね、男と女が居れば恋だ愛だと恋愛脳にもほどがあるだろ。」
「貧困とはどういうことですか!そもそも女性に向かってしょ…ゴニョゴニョ」
「タリア様と言いましたね。俺の思い人は、決して俺の手の届かないところにいるんですよ。」
「そ、そうなのですか?」
「えぇ、でも俺はそれでも彼女を一途に思い続けます。それこそが2次元に生きる漢(せんし)の生き様だから…」
「2次元?その人はどんな方なのですか?」
何この子、恋愛話になるとめっちゃ興味津々じゃないか。今までの敵意はどうした?頭がちょっと…器用ではない女性なのかもしれない…しかし、聞かれたならば答えよう!愛する彼女の天使ぶりを!というかほかの方々も思いっきし耳を傾けてるし。
「その人はつぶらな瞳に長い黒髪をアップにし、いつも俺に微笑みかけてくれる天使のような女性です。」
「まぁ、素敵な女性なのですね…なかなか会えないのですか?」
「いえ、すぐ近くにいるのですが、触れることが出来ないのです。」
「すぐ近くにいて触れることが出来ない…まさか、精霊様?!」
え?精霊?いや天使だよ?というかまさかここまで夢見がちな娘だとは…なんか微笑ましいね。
「会ってみたいですか?」
「是非会いたいですわ!」
すんごいこの子身を乗り出している。近い!近いよ!
「わ、分かりました。貴方も彼女に会えば心奪われるでしょう。」
フフフッ、精霊とは惜しいな、正解は天使だ!マリアたんの可憐さに慄くがよい!俺はスマフォを起動しマリアたんをホログラムで映す!
「彼女がマリアたんです!」
……………
……………
……………
……………
なぜか全員固まった。やや、ややややややや?何故に?タリアがひきつった笑顔で問いかける。
「え?…え?…2次元って…え?」
「2次元とは簡単に説明すると、絵に描かれた美少女ですね!可愛いでしょう?」
俺は、ボイスボタンを押した。
(ねぇ、一緒に遊びに行こうよ!君と一緒ならどこでもきっと楽しいよ!)
「へへへ?可愛いでしょう?最高でしょう?可愛いでしょう?」
ホントに大事な事なので3回言った。
(((((ブチッ)))))
もし10分前に戻れるのなら俺は自分の口を塞いでただろう。俺は何故このような事を口に出したのだろう…後から思うに、黒歴史(ふるきず)を抉られ過ぎてグロッキーになっていたんだと思う。そしてこの時、俺には与り知らぬことだが、現在この部屋にいる女性陣はミトリーの綺羅華達と呼ばれ、街の女性たちから羨望の眼差しを受けているらしい。そして、彼女たちも内心自分の容姿に自信を持っていたようだ。だから俺の守備範囲だから安全ですよ宣言は、彼女達の誇りを大いに傷つけただけではなく、マリアたんの方がいいという、あろうことか、実在しない人物…ただの絵に負けたことは、女として決して認められないことであったようだ。つまり、
ガシッ
「グェッ!」
「トーヤ様?ちょっとお話が…」
「ここは狭いので、もっと広いところに行きましょう?」
「奥様、お嬢様、訓練所ならば誰にも邪魔されずに進められて宜しいかと。」
「私もついていきます!」
「フフフ、この私に…胸が小さいって…絵に負けたって…フフフ」
後にルイスが語るには皆目に光がなかったそうだ。この時俺は首を掴まれ死にかけていた。ホントマジでアイギスさん助けて!って目で頼んでみたが、あいつ絶対に俺と目を合わそうとしなかった。俺は酸素不足で意識朦朧となる中、体中を走るほどすさまじい衝撃と痛みを長時間受け続け発狂する寸前、ようやく意識は闇に沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます