第2話 ドラゴンさんが拾ってくれたようです
やあ、どうも。
目が見えるようになってからしばらく経ちまして、よちよち歩きが出来るようになった私です。
バランスを崩したらすぐに転んで頭を打つので、洞窟の壁際に手を当てて立っているとか、そんな塩梅です。
背後からは、ドラゴンさんの呆れたような視線がビシビシ刺さってきています。
そう、メタで出落ち感ありますけど、赤子の時に捨てられた場所はドラゴンさんの目の前だったというオチだったわけです。はっはっは、笑えん。
いわゆる生け贄、とかいうやつだったわけですよ。
にしてもですよ? 生まれたばかりの赤子をドラゴンへの生け贄に捧げるとか、どんな野蛮な文化体系もってるんですかね。ここの人々は。
ドラゴンくらい退治する気概を持ってくださいよ。所詮は爬虫類ですよ、爬虫類。
「我は既存の生命樹には連なっておらぬ」
「え、なんですかそれ。生命体じゃないってことですか? 精霊体とか、信仰による顕現とか、世界の意思とか、そんな神秘物って感じですかね?」
「まぁ、そんなところであろうよ」
生物かすら怪しいようです。
残念ながら、人々の怯える態度が正解で、生け贄を捧げるような文化は間違いだということが証明されてしまいました。生物じゃないから贄とか飲み物とか食べ物とか全くいらないですよね。
とか言ったら、食べることはできるし、飲むこともできると言われました。体内で飲食物を分解して、顕現に必要なエネルギーに変えるとのことです。けれども、別に飲み食いせずとも呼吸するだけで顕現に必要なエネルギーが賄えるらしいです。仙人ですかあんたは。
「で、どうして私を放逐せずに育ててくれたんです?」
「気まぐれだ」
「ははあ、然様で」
「うむ」
まあ、ドラゴンさんの気まぐれに感謝しつつ、その気まぐれに殺されないうちに立って歩けるようになり、狩りくらいはできるようになっておきたいところですね。
ということで、それまで生きていられますように。
いや、別に喰われたら喰われたで諦めついてますから良いですけどね、別に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます